厚生省の平成10年度の調査によれば、全国の糖尿病予備軍の数はおよそ1370万人で、中高年の4人に1人が将来、糖尿病になると予想されていま す。糖尿病は生活習慣病でありながら、がんや心筋梗塞のような死に至る病いというイメージがありませんが、三大合併症といわれる糖尿病性の網膜症や腎症、 それに神経障害などの深刻な合併症を引き起こす病気です。今回ご紹介するマルベリー(桑の葉)は体内への糖分の吸収を抑える働きがあるため、糖尿病の予防 やダイエットの目的に大きな注目を集めています。わが国では桑の実を食したり、桑の木の皮(桑白皮)が血圧を安定化するため漢方で利用されることがありますが、糖尿病の予防では葉部を用います。
桑の葉にはDNJ(デオモシノジリマイシン)と呼ばれる成分が含まれ、α-グルコシダーゼという酵素の活性を阻害することが確認されています。食事に含まれる糖分やでんぷんは小腸内でα-グルコシダーゼによってブドウ糖に分解されて小腸から吸収され血液中に入ります。そのため食後には急激な血糖値の上昇がみられます。ここで食事の前に桑の葉のハーブティーを服用しておくと小腸の粘膜上のα-グルコシダーゼの働きをDNJが抑制するため、糖分のブドウ糖への分解が妨げられて食後の血糖値の上昇を抑えることができるというわけです。小腸で吸収されなかった糖分は大腸に移行し、腸内細菌に影響を与えてお通じをよくするため桑の葉茶は便秘にも効果があります。
鎌倉時代に栄西禅師によって著された『喫茶養生記』という書物があります。今でいえば「ハーブティー健康法」とでもいうべき内容ですが、この中に「水をいくら飲んでも渇きを覚える飲水病には桑の葉がよい」という記載があります。口が渇くのは糖尿病の症状で、飲水病とは現在の糖尿病のことです。DNJといった有効成分やその作用が知られていなかった当時にすでにこうした養生法があったことを知ると昔の人の知恵には驚かされるばかりです。
桑の葉の糖分吸収抑制効果を得るには乾燥した葉の重量で3gほどで十分であり、熱湯で抽出しても成分はこわれないため、食後ではなく食前に服用することさえ守れば煎茶や焙じ茶とまったく同じ服み方でよいのです。さらに桑の葉には珍しい成分として亜鉛が多く含まれます。亜鉛は味覚に関係するミネラルですが、細胞の酸化(老化)を防いだり生命力そのものを強めるため生活習慣病の予防にも役立ちます。またクワノンという美白成分も含まれるため中高年の女性の間でも人気が高まっています。
1.ハーブティー
●糖尿病の予防やダイエットに
マルベリー3gを煎茶をいれる要領で急須に入れ、熱湯200~300mlで3分間抽出し、毎食事の30分前に服用します。おやつなどを食べる場合も飲食30分前に服用します。食後の服用では糖吸収抑制の効果は期待できません。
●シミの予防や便秘の改善に
マルベリー3gとローズヒップ(野バラの実)1gをブレンドし熱湯200mlで3分間抽出し、1日3回服用します。この場合は食後の服用でもかまいません。ローズヒップは天然のビタミンCを豊富に含むため、美白効果と緩下効果に相乗効果が期待できます。
2.パウダー剤
●野菜の不足している人や体質改善に
マルベリー3gをミキサーで粉砕しパウダー状にします。食後に熱湯200mlに溶かしてから服用します。マルベリーはクロロフィル(葉緑素)を豊富に含むため浄血作用にすぐれ体質改善を進めます。カプセルの中にパウダーを詰めてカプセル剤として持ち歩き、外食の後に服用する方法もあります。
●ビタミン、ミネラルなどの補給に
マルベリー3gをミキサーで粉砕しパウダー状にしたものを牛乳200mlに加えてよくかき混ぜてから服用します。抹茶ミルク風味の栄養ドリンクができあがります。