青のりの香りが漂う恵の川
四万十川を地図で見ると、珊瑚が枝を広げて海の中でそよいでいるように見える。
この日本一きれいな川と称される四万十川は、四国山脈の山間から流れいでる清水を集めて太平洋に注いでいる。
春のうららの日、中村市のある河口付近では、アオサと呼ばれる青のりの香りが漂っていた。採りたてのアオサを天日干していたおばあさんは「この川の上流には大きな工場がないのと、山に木がいっぱいあるから川の水がきれいで、海と川の水が交じり合ったところのアオサが一番いいのが採れる」と四万十川の恵を話してくれた。
このきれいな四万十川の源流を見ようと上へ上へと遡った。
すると川の流れにも似たゆったりした息使いのする人々の生活に出逢った。
山間の小さな部落、梼原町上成で天にも昇りそうな段々畑を見た。もうそこでは川は消え失せていて、傾斜した地に石垣を積み上げ、猫の額ほどの畑や田んぼに一条の清水が取り入れられているだけだった。