聖域
幾台ものトラックが排気ガスを撒き散らしながら産業道路をけたたましく走り、周りには巨大な倉庫群が立ち並ぶ、大井埠頭はすべてが埋め立てによりできあがった人工の島だ。そんな風景の片隅にこんもりと緑が茂った森がある。中には手入れの行き届いた淡水池や海からの潮が流れ込む干潟が作られている。周りの喧噪が不思議とかき消され、小鳥の鳴き声が聞こえてきた。
観察小屋に入って銃眼のように刳り貫かれた小窓からしばらく覗いていると、キアシシギがピューイピューイと鳴きながら目の前の干潟に現れて砂の中に隠れているゴカイをついばみ始めた。遠くでボラがカワウに追われて1度、2度、3度とジャンプした。淡水池ではダイサギがゆっくりゆっくり歩き回りながらその鋭い嘴で上手に小魚を捕らえた。
そんな鳥たちの活き活きした動きに目を奪われているうちに、時はゆったりと過ぎてゆき、小さな聖域に鳥たちと一緒にいる喜びがふつふつと湧き起こった。