川遊び
小さなホテルの裏手の木々を抜けると川面が光って見えた。近づくにつれ、かぼそい川辺の水音が聞こえてきた。耳を澄ましてその音に浸っていると、遠くで川遊びをする子どもたちの声が紛れ込んでいるのが分かった。足下の淀みには小指ほどのカジカが1匹、底に這いつくばってる。頭でっかちなその魚は、ときたま深呼吸をするかのようにエラを大きく開いている。
子どもたちの声がどんどんと大きくなり「魚いた」「なんも」などといっている。突然、裸足の子どもたちが川のなかに現れ出て、私とカジカが居ることなど意にも介さずじゃぶじゃぶと水音をたてた。カジカは危険を感じたのかくるっと反転し深みへと姿を消した。
子どもたちが去り、静けさが戻ると、夏風に秋の気配を潜ませた風が吹いてきて、周りに咲く黄色い野花たちを揺るがし、こんどは、小さなバッタがあちらこちらで跳ねだした。