身体はいろいろな栄養素を必要としている。
そのバランスが壊れたときに病気が襲ってくる。
そこで食事では補いきれない栄養素を摂取するための栄養補助食品「サプリメント」がいま、注目を集めている。
吉村克己 (ルポライター)
栄養素不足をチェック
アメリカでは病気予防のために、ハーブやビタミンなどの成分をカプセルや錠剤、抽出液として摂取する栄養補助食品「サプリメント」が人気を集めている。
日本でも厚生省が薬品ではなく、食品という名目によって規制緩和を進めており、大手企業が次々にサプリメント関連製品を市場に出し始めた。
なぜサプリメントが注目を集めているかといえば、食生活における加工食品の比重が高まり、人間の身体に必要な栄養素が不足しているからだ。そのことを実感させてくれるサイトがある。
徳島市にある四国大学の吉村幸雄教授・保健学博士主催のホームページ『栄養データベース』の中の「インターネット栄養診断」である。日々の食生活の内容を入力すると、その場でエネルギーバランスや栄養摂取量を評価してくれるので、不足している栄養素が一目で分かる。
例えば「肉や肉の加工品は一週間に何回食べますか?」という設問に対して、ほぼ毎日、ときどき、ごくたまに、ほとんど食べない、という4ランクで答える。こうした設問が魚、野菜、果物、お菓子など食物全般で30問以上におよぶ。
筆者もさっそく試してみたところ、本来、摂取するべき所要量より大幅に少なかったのがカルシウムと食物繊維という結果になった。また不足している食品でいうと、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品、穀物・いもと出た。総合評価では100点満点中、55点と赤点ぎりぎりだ。結構バランスよく食べてるなと思っていただけにちょっとショックを受けた。
これまでこのインターネット診断を受けた人はのべ8000人に達する。20代の女性が圧倒的に多い。平成10年度版国民栄養調査と比較すると、回答者の栄養摂取量は全般的に低くなっている。
この結果について吉村教授は「インターネットのアンケートは対面調査と違って、どこまで真剣に答えてくれているかどうか分からないので、インターネットユーザーの摂取量が少ないとまだ結論づけることはできない。近々、利用目的を尋ねるなど改訂を行いたい。だが時間のかかるアンケートの割にはよく利用していただいている。これを通じて食生活見直しのきっかけとしてもらえたらいいのではないか」と語る。
このサイトには平成9年度の徳島県民健康・栄養調査の結果も掲載されており、それによると若い世代は、たんぱく質とビタミン類以外の主な栄養素について不足がみられ、特に15~29歳ではエネルギーやカルシウムの不足が目立つという。理想的な食生活というのはなかなか難しいということがよく分かる。
吉村教授の監修による、さらに詳細な栄養バランスチェックができるサイトが大塚製薬のカロリーメイトのホームページにある『バランス・チェック』である。
先着一万名まで登録でき、摂取栄養素・体重の変化の記録を30回分見ることができる。現在の登録者は9700人を超えているので、興味のある方はさっそくアクセスしてみよう。
このサイトでは朝昼晩の3食を具体的で細かいメニューから選ぶことができる。例えばご飯1膳、ワカメのみそ汁1杯、目玉焼き2個……という具合だ。
筆者の昨日のメニューを入力すると、エネルギーは所要量の72パーセント程度、食物繊維は69パーセントという結果になり、冒頭の診断を裏付けた。やはり食物繊維が不足しているようだ。
高野さんによれば大量の飲酒が人間に必要な栄養素を欠乏させる原因は、ストレス、アルコール代謝(アルコールの分解無毒化)に必要な栄養素の集中的な消耗、アルコール性の肝機能障害の3つあるという。これらを補うサプリメントは「あなたを強力にバックアップするサポーターだ」という。
アメリカではアルコール依存症患者のために作られたサプリメントがあり、高野さんはそれを個人輸入で購入している。
確かに現代科学においても栄養素と精神活動の明確な因果関係は完全に解明されたわけではありません。しかし、依存症からの回復はとても厳しいものです。藁にもすがりつきたい心境です。科学的に解明されるのを待つ時間的余裕はないのです」と高野さんは語る。
またサプリメントについて「決して薬ではないのですから、その効用は劇的なものではありません。つまり、その効用が体感し難いということです。それだからこそ流行や商業用の宣伝文句に惑わされることなく、自分に合ったものを探すことが大切なのです」という。
現在、アメリカではサプリメントの市場が急速に拡大している。新規参入するメーカーも多く、品質や価格はまちまちだ。そのため医師や専門家のアドバイスは欠かせなくなっている。
米タホマ・クリニックのジョナサン・ライト院長はサプリメントを利用した栄養療法の第1人者である。同クリニックの日本語のホームページがあり、各疾病別のサプリメント処方事例を記した医療報告書(英文一~二ページ)を10ドルで入手することができる。もちろんライト院長の調合した各種サプリメントを購入することもできる。
またサプリメントの販売サイトとしては「ビタミンシティ」のホームページがよくできている。日本人が98年にアメリカで設立した企業が運営しており、症状に合った商品の詳細な説明から、相談コーナーも設置してあるので、メールで問い合わせることも可能だ。
ユーザからのよくある質問と回答がまとめられており、副作用など気になる情報が掲載されている。例えば、若返りのホルモンとして話題になっている「DHEA」というサプリメントが30歳以下の体内分泌が活発な人には勧められず、妊娠、授乳婦、心臓の弱い人も避けた方がいいこと。適量以上に服用した場合、肌が油っぽくなり吹出物が出たり、女性の場合、顔面に細毛が生じたり、また短気や攻撃的になることもあることなどがちゃんと記載されている。
身体に有効なサプリメントも用量用法を守らないと害をもたらすことを覚えておく必要がある。
前出の吉村教授も「これまでサプリメントの過剰摂取の害はあまりいわれてこなかったが、厚生省も含めて各国の機関が問題点を指摘し始めました。用量は必ず守ることと、基本的には食生活で必要な栄養素を摂取するように心がけることが大切です」という。
サプリメントは文字どおり食生活を「補う」ものであることを肝に銘じたい。