ハトムギ
いぼとりや肌あれから滋養・強壮に、
また漢方では利尿、鎮痛、神経痛や化膿症に
方剤として幅広く用いられる。
林真一郎(薬剤師 グリーンフラスコ(株)代表)
ハトムギ(ヨクイニン)は、わたしたちには古くからなじみのある生薬ですが、ユニークな風味と幅広い効能から海外でも人気を得ています。原植物は、中国、 インドシナの原産ですが、わが国でも長野、埼玉、群馬などで栽培されています。イネ科の1年生の草本で、秋に楕円形の果実を生じます。10月ごろに成熟した時に果実を採取し、乾燥させた後に選別してモミスリ機にかけて外皮を去り、スリ臼でコルク皮を去って精白します。
江戸時代の本草学者によれば、漢方のヨクイニンはジュズダマとハトムギの二種があるということですが、薬用にはハトムギを用います。
ジュズダマはアジア熱帯の原産といわれていますが、やはりハトムギと同じようにわが国でも栽培されています。ハトムギに比べて果実は卵形で、さらに堅く、光沢があるのも特徴です。
ハトムギの成分は、でんぷんがおよそ50~80%と最も多く、ついでタンパク質が15~20%、脂肪油が2~7%と続き、その他に多糖類やステロールを含みます。ハトムギを服用すると歯の間に粘着しますが、これは主としてアミロデキストリンからなるでんぷんを多く含むためです。脂肪油を構成する脂肪酸はパルミテン酸やミリステン酸で占められています。
さて、ハトムギの特徴はその幅広い効用にありますが、漢方では利尿、消炎、鎮痛、排膿の目的で浮腫、リウマチ、神経痛などの疼痛や化膿症に方剤として用いられます。またいぼとりや皮膚があれるのを防ぐ目的でも用いられ、滋養・強壮剤としても知られています。
薬理作用の研究では、抗腫瘍作用が確認され、マウスのエールリッヒ腹水がんに対して延命効果が報告されています。
ハトムギの効用で最も知られているものの一つにいぼとりがあります。いぼはウィルスが関与して発症する腫瘍といえますが、医薬品を用いる西洋医学的な手法でも治療が難しい一方で、ある日突然に病気の進行がストップしたり、いぼの消失が起きるといった興味深い経過をたどることがあります。ハトムギの服用が奏功するケースも多いのですが、そのメカニズムについてはまだよくわかっていないのが実状です。しかしハトムギの成分が生体に仕組まれた「治癒のスイッチ」 を押したことは確かなようです。抗生物質などの医薬品でも望めない効果を、古くからある誰でも知っている民間薬が発揮するというのは不思議な気がします が、その秘密は植物が生合成したフィトケミカル(植物化学)成分が生体防衛機能を活性化することにあるようです。ハーブの効果はマイルドであるばかりでは なく、時には大変強力なのです。
1.ハトムギの服用法
ハトムギの果実20g~30gを軽く火で焦がし、500~600ccの水で20~30分、煎じ、かすをこしたものをお茶代わりに飲用します。
ハトムギは豊富なでんぷんやタンパク質、脂肪油を含んでいるので、お粥やお餅として食べることもできます。
お米のお粥にハトムギを30%ほど混ぜてつくります。
ハトムギのお茶は味がうすいので、他のハーブとブレンドすると風味を増し、相乗効果が期待できます。
2.ハトムギのブレンドティー
便秘を改善し、ニキビを防ぐ美容茶
ハトムギの果実とダンディライオン(西洋タンポポ)の根を軽く焙(ほう)じ、等量ずつ混合してブレンドティーとします。
ダンディライオンの根には苦味質であるタラキサシンやタラキサステロールを含み、解毒作用とともにお通じを改善することで、ニキビや吹き出物を防ぎ、美しい肌を取り戻すことができます。
ダイエットと美白に効果がある美容茶
ハトムギの果実と桑の葉(マルベリーリーフ)を軽く焙じ、等量ずつ混合してブレンドティーとします。
桑の葉に含まれるDJN(デオキシノジリマイシン)という成分が小腸の粘膜からの糖分の吸収を抑えるため糖尿病の予防やダイエットに効果があります。
また桑の葉にはクワノンという美白成分が含まれるため、ハトムギの美肌作用とあいまって効果を高めます。
食前の服用が効果的です。