多摩川の鯉
夏の午後、多摩川の下流域の河畔では、のんびりと釣り糸を垂れる光景があちらこちらで見られた。この辺りには、鯉やへらぶなが生息していてよく釣れるというが、この鯉たちに異変が起きているという。多摩川に人間が作り出した内分泌攪乱化学物質がオスの鯉の精巣異変を起こさせているというのである。
橋の上から何気なしに下を覗くと、川がよどみをつくったところに、藻が繁っていて、その下に大きな鯉が潜んでいた。釣り人が食パンを餌にして、そいつを狙っていたが、敵もさるものといった感じで、何度も何度も餌をとられている。突如、藻の割れ目から、鯉がヌーッと顔を出したかと思うといきなり、餌に食いつき、釣り人との戦いが始まった。5分ほどすると、勢いよく暴れていた鯉も、疲れたのか釣り人のなすがままに岸にたぐり寄せられた。釣り人が鯉をリリースすると、飛び跳ねてからゆっくりと深みへと沈んでいって見えなくなった。