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釧路湿原

湿原の芽吹き

釧路湿原の中を、1本の道が貫いていた。道の両脇に、背の高い葦原が続き、まるで遮眼帯を掛けられた馬のように、ただただ道筋を辿っていると、急に少し前の葦がざわめいた。と、その中から1羽の丹頂鶴がニョイと顔を出した。警戒するでもなしに道に現れ、私の前をゆっくりと歩いている。仲間たちはとっくにシベリアに帰ったというのに、暢気な奴だ。

またしばらく道を辿っていると、今度はキタキツネに出っくわした。冬毛が抜けて尻尾も細くなり、哀れな格好をしている。自分でもそう思っているのか、こそこそと走り、葦原に隠れてしまった。

大きな沼に出た、水辺の温かい所に水生植物が寄り集まっていて緑色のリングができている。水面を透かして見ているとなにやら魚がいるようだ。鳥も、動物も、植物も湿原の春をもう今かと待っていた。