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周瑜の感情と中医学の七情

呉の若き武将周瑜(しゅうゆ)に投げつけられた罵詈ざん謗が彼の生命を脅かす。

岡田明彦

周瑜が孔明の計りごとにあい三回も激怒した蘆花蕩

中国医学に、人間の感情の起伏を喜・怒・思・悲(憂)・恐・驚の7つに分け、それを七情と呼ぶ考え方がある。この七情に、さまざまな外的ストレスが過度に加わると、病を引き起こし死に至ってしまうことになる。
また七情は臓器と密接不可分な関係にあるとされていて、その関係性は次のようになる。

心 は喜を主るが、喜びすぎると心を損傷する。
肝 は怒るを主るが、怒りすぎると肝を損傷する。
脾 は思を主るが、思いすぎると脾を損傷する。
肺 は悲憂を主るが、悲しみ憂いすぎると肺を損傷する。
腎 は驚恐を主るが、驚き恐れすぎると腎を傷つける。
―『中医学の基礎』より―

赤壁にある周瑜像三国志演義の中にもこのような状態に陥った人々を中医学的表現で記載している個所が多々ある。
例えば、呉の都督周瑜は、赤壁の戦いを孔明と組んで勝利する。その後、夷陵での魏軍の曹仁との戦いで脇腹に矢を受けてしまう。従軍している医師が矢を抜き、治療しながら、周瑜の怒りっぽい性格を見抜き「怒気」に注意しないとまた傷口が開くと忠告する。
ここで言う「怒気」が七情の中の「怒」を表し肝臓と対応する。怒りすぎると肝気が上昇し、血は気とともに逆行し、意識不明や人事不省におちいるとされている。一般的に言うと「頭にきて訳が分からなくなる」と言う状態である。
これを裏付けるように演義では、曹仁は周瑜に対して、あらん限りの罵詈 謗を浴びせる。その声に挑発され激怒した周瑜は、戦いを挑もうと馬に乗ろうとするが、口から血を吐き落馬してしまう。
これを中医学的に推理すると、怒りすぎががもたらした「昏厥」(突然倒れて四肢が冷たくなり、意識不明におちいること)という症候ではないだろうか?
曹仁は、周瑜の短気な正確を見抜いていた。悪口を言って、怒らすと病を悪化させることも知っていたに違いない。
この曹仁と周瑜の戦いに乗じて、孔明は南郡、襄陽、荊州の各城を周瑜の味方のような顔をして手中に収めてしまう。その度に周瑜は孔明に激怒しさらに傷口を広げ、口から血を吐くこと、3度目には死に至ってしまう。
敵将の性格や気性、疾病の有り無なしをうまく利用するのも戦の常である。

荊州争奪の地となった荊州城
赤壁の渡し場
翼江亭から烏林を望む
 
周瑜が敵軍を視察したという翼江亭
武漢の名蹟黄鶴楼