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盤洲干潟(千葉県木更津市)

夏麻引ひく

東京湾の原風景を留めるといわれる盤洲干潟を訪れた。
葦原を抜けて岸辺に立つと白々と辺りが明け始め、音もなく潮が引いて、波形を砂地に刻み込んだ干潟が現れた。干潟に足を踏み入れると足下はふかふかとして心許なかった。
ほの暗く冷え込んだ中を注意しながら歩いていると、ふと背中に温かさを感じた。振り返ると雲間から太陽がほんの少し顔を出し、その恵みを与えてくれていた。岸辺を見るともう随分と歩いてきたのだと思った。太陽はみるみるうちに辺りを照らし出し、渡り鳥が編隊を組んで空を飛びかい始めた。
そのさまを目で追っていると、その編隊の遠くのほうに、おぼろげながら富士山がその雄大な姿を現した。東京湾はと見れば空の色を映して青々と輝いている。静かさの中あちらこちらで早起きの漁師たちが小舟から降り立ち、腰マンガという道具を使いアサリ採りにいそしんでいる。