GOT
臓器細胞の中にありアミノ酸の合成を促進するトランスアミラーゼという酵素の仲間で、臓器や組織が損傷すると血液中の量が増加する。肝臓、 心筋、腎臓などに多く存在し、これらの臓器の細胞に異変が起こると血液中の量が増加する。GOTの検査はGPT検査とともに、肝臓の検査としてはもっとも 一般的なものであり肝臓病の早期発見には欠かせない。正常値は0~40単位。
GPT
GOTと同じく臓器細胞の中にありアミノ酸の合成を促進するトランスアミラーゼという酵素の仲間。肝臓、心筋、腎臓などに多く存在し、肝臓に最も多く含まれる酵素で、肝細胞の変性や壊死により血液中に流れ出し急性肝炎で最も強く上昇する。正常値はGPTが0~35単位。
γ-GTP
肝臓や腎臓、膵臓、血液中に含まれており、GOT、GPTと同様にたんぱく質を分解する酵素。おもに胆道系の疾患で胆管などが閉塞した時に血液中に放出される。アルコールには非常に特異的で、γ-GTP検査はアルコールによる肝障害には欠かせない。正常値は約0~40単位。
ウイルス肝炎
肝臓病の原因の8割以上を占めるウイルス性の肝炎。主として血液を介して感染するB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルス、口から伝染するA型肝炎とE型肝炎ウイルスがある。その他、未発見のものがあり、今後さらに新種の肝炎ウイルスが発見される可能性もある。
A型肝炎
A型肝炎ウイルスはそれを保有する患者の便と一緒に体外へ排泄され飲み物や食べ物(生の魚介類など)に入りそれを食べると感染する。肝炎の中では治りが早く一度感染すると免疫ができ、感染しなくなる。まれに劇症肝炎になる場合があるが、慢性化することはない。
B型肝炎
キャリアの血液が注射針による医療事故、輸血、性行為などで感染する水平感染と、生まれるときにキャリアの母から感染する垂直感染がある。乳幼児の感染以外は一過性の急性肝炎で終わり、ごく一部を除いて慢性化する心配はない。また、症状がでないまま、いつの間にか抗体ができて治癒してしまうことも多い。しかし急性のB型肝炎のうち1%くらいは劇症肝炎に移行し死にいたるケースもある。
C型肝炎
ほとんどは輸血や予防接種など医療行為によって血液感染する。B型に比べると感染力は弱く母子感染は少ないと考えられる。C型急性肝炎になった人の半数近くは慢性肝炎に移行する。慢性化した場合、肝硬変症や肝がんに移行しやすい。C型急性肝炎の症状は、A型やB型に比べてはるかに軽いので、慢性化してから発見されるケースが多い。
アルコール性肝炎
アルコールの多飲が原因で起こる肝炎。わが国ではヨーロッパに比べて比較的少ないが、近年、増加の傾向にある。
自己免疫性肝炎
自己免疫疾患(アレルギー)が肝臓を場として生じ、その結果、肝細胞が障害を受けることによって起こる。
薬剤性肝炎
ハロウセン、アセトアミノフェンなどの麻酔鎮痛薬、そのほかの薬物によって起こる肝臓障害。
急性肝炎
肝炎ウイルスが肝臓で増殖しはじめると、免疫細胞であるリンパ球が感染した肝細胞を攻撃して、これを取り除こうとする。この結果、肝細胞が多量に破壊されるので、肝臓の働きは低下して、たんぱく質の合成や糖代謝、解毒作用が十分に行われず、激しい食欲低下や疲労感、吐き気を感じる。また、本来、肝臓から十二指腸に排泄されるべきビリルビン(胆汁の色素成分)が血液中にもれて、黄疸が生じる。時間の経過とともに大部分の症例では、破壊された肝細胞はふたたび修復され、もとの正常な肝臓にもどる。
劇症肝炎
急性肝炎の数パーセントに起こる肝細胞がほとんど死んでしまう症状。意識障害(肝性昏睡)が起こり、肝臓は畏縮し、肝不全に陥るケースも少なくない。原因は薬や肝炎ウイルスによるもが多い。劇症肝炎をもたらす肝炎ウイルスは主にB型で、まれにA型でも起こる。
慢性肝炎
急性肝炎のような急な経過をとることはなく、自覚症状もあまりないが、肝機能に障害が認められる状態が半年以上続く場合。消化器系から肝 臓に血液を運ぶ静脈である門脈のあたりが線維化して硬くなり、これが広がっていく。主な原因はB・C型肝炎ウイルス、自己免疫性肝炎。とくにC型肝炎は急 性肝炎で治りきらずに慢性化することが多い。
肝硬変
慢性肝炎で門脈周辺の線維が進み、硬い組織が出来上がった状態。肝臓内の血液の流れが悪くなり、門脈の圧が高まる。肝臓の機能が著しく低下して、たんぱく質の合成などができなくなる。腹水もたまるようになると、肝不全と呼ばれる危険な状態が訪れる。
肝がん
肝炎ウイルスが原因の慢性肝炎や肝硬変が進むと肝がんになりやすくなる。日本人の肝がんの95%以上は、B型とC型肝炎ウイルスが原因といわれる。肝がん死亡者は年々増加し、98年には約33,400人と20年前の倍以上になり、がん死亡者の中では肺、胃に次いで3番目。いずれトップに立つと考えられている。
食道静脈瘤
肝硬変で門脈の圧力が高まり、消化器系から肝臓に入るべき血液が肝臓を経ずに胃冠状静脈、短胃静脈を通して胃食道静脈叢という細い血管に入り込みこぶができる。これが破裂して大出血を起こし、致命傷になることがある。