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母の強さと温かさを備えた癒しの力

カモミール

ハーブの名に秘められた意味を考え、
ハーブにまつわる神話や物語に思いをめぐらしてください。
すると、ハーブの楽しみはさらに深まり、
効果はいっそう高まることでしょう。


ハーブ医学やアロマテラピーの分野でラベンダーと並んで最も親しまれているハーブにカモミールがあります。カモミールにはジャーマン種とローマン種があり、ハーブ医学では前者が、アロマテラピーでは後者がよく用いられます。いずれも菊科に属し、白い花弁と黄色い円錐形の中心部からなるデイジーに似た外観が特徴です。

植物は世界共通の呼び名として学名を持っています。この学名がそのハーブの性質や効能を端的に表している場合が多く、ハーブ医学を研究する者にとっては密やかな楽しみでもあるのです。ジャーマンカモミールの学名はMatricaria chamomillaと言います。Matricariaはラテン語のmater(母)とmatrix(子宮)から、chamomillaはchamai(大地の)とmelon(リンゴ)からなっていると考えられます。このハーブが冷え性や生理痛などの婦人科領域や、夜泣き・湿疹などの小児科領域で多用され、またハーブティーにすると野生のリンゴの香りを漂わせることを物語っています。

ピーターラビットの童話で、具合の悪い子ウサギに母ウサギがスプーン一杯のカモミールティーを飲ませる場面をご存知の方も多いと思います。またアングロサクソン人の神話によればカモミールは薬草の神ウォドン神がこの世に与えた9種の聖なるハーブのひとつであると言われています。
カモミールは踏みつけられれば踏みつけられるほど力強く回復し、広がるため、その旺盛な生命力から「逆境におけるエネルギー」という諺でも知られています。さしづめ「母は強し」といったところでしょうか。


一方、アロマテラピーでは、香りがマイルドで、鎮静、鎮けい作用が強いローマンカモミールが用いられることが多く、やはり女性特有の神経過敏を伴う不眠や 生理前症候群に対して入浴やマッサージの形で用いられます。前回、ご紹介したラベンダーも不眠に用いられるようにアロマテラピーでは同じ症状でも多くのエッセンシャルオイル(植物精油)の中から最適の種類を選んで処方します。
ラベンダーは頭の中の雑多な情報を一度ゼロに戻す働きを示し、ローマンカモミールは母の懐のように温かく守られた安心をもたらすのに効果的です。したがって、昼間の出来事やストレスが頭から離れないタイプの不眠には、ラベンダーが、心身の極度の疲労や孤独感、絶望感を伴う不眠にはローマンカモミールが効果を発揮します。
アロマテラピーでは目の前の症状だけではなく、その奥にひそむ心理的な要因を注意深く探ることが必要であり、またハーブの効能、効果を有効成分の科学的アプローチからだけではなく、そのハーブのもつ神話や物語の次元まで含めて立体的に構成し、処方を組み立てることが大切なのです。

アロマテラピー 暮らしの実践講座

1.蒸気吸入
エッセンシャルオイルの香りを嗅いで脳に信号を送る方法です。

▼使用法:ティーカップかボウルに熱湯を入れ、そこにエッセンシャルオイルを3、4滴たらします。蒸気と一緒に有効成分がお部屋いっぱいに広がります。
★例:寝室にローマンカモミールの香りを漂わせると入眠がスムーズになり、質の高い睡眠が得られます。

2.入浴(アロマバス)
エッセンシャルオイルを入浴時に用いる方法で、香りを吸い込むとともに皮膚からも吸収されます。

▼使用法:入浴時にバスタブに3、4滴たらして手でよくかきまぜてから入浴します。
★例:ややぬるめのお湯でローマンカモミールバスを行うと深いリラックスが得られます。

3.オイルマッサージ
エッセンシャルオイルを植物油に希釈して、それをマッサージすることにより皮膚から体内に浸透させます。

▼使用法:ホホバ油10mlにエッセンシャルオイル2、4滴の割合で希釈してマッサージオイルを作り、お風呂あがりにマッサージしてすり込みます。
★例:首・背中・筋肉の緊張やスポーツの後にローマンカモミールのオイルマッサージを行うと筋肉がゆるみ回復が速まります。