ハーブを植物油の中に漬け込んでおくと有効成分が植物油中に溶け出すため、さまざまな治療効果をもった油を作ることができます。こうしてできあがった油のことを浸出油(インフューズドオイル)と呼びます。
さて、アロマテラピーで用いられるマッサージオイルは、エッセンシャルオイルをホホバ油やマカデミアナッツ油などの植物油に希釈して作りますが、植物油のかわりに浸出油を用いることでさらに治療効果を高めることができます。なかでも欧米で古くからヒーリングオイルとして有名なものが今回ご紹介するマリーゴールドの浸出油です。マリーゴールド(学名Calendula officinalis)は薬用種のマリーゴールドで、わが国のキンセンカにあたるものです。名称のまぎらわしいアフリカン・マリーゴールドやペルー・マリーゴールドと区別するために植物療法の分野では学名を生かしてカレンデュラと呼ばれています。それではカレンデュラの浸出油の作り方をご紹介しましょう。
広口のガラスビンにカレンデュラの花弁をいっぱいにつめこみます。そこにヒマワリ油などの植物油を注ぎ込み、フタをして窓辺に放置します。窓辺に置くのは油の温度を上げて有効成分の溶出を高めるためです。1日2回ほどビンをゆすって2~3週間経過したら布でこして花弁を除去してできあがりです。
浸出油の中にはカレンデュラの有効成分であるカロチン(体の中に入るとビタミンAに変わる物質)やステロール類(ホルモンに似た働きをする物質)が含まれているため、治療効果としては、傷ついた皮膚や粘膜の炎症を鎮め、毛細血管を保護、修復します。できあがったカレンデュラ油はエッセンシャルオイルを加えてマッサージオイルを作る材料として用いられますが、何も加えずにそのままでも用いることができます。たとえば産婦の乳首が炎症を起こして痛みや出血がある場合などにやさしく塗布することで炎症を鎮め刺激から保護することができます。材料はすべて自然のものですから赤ちゃんがなめても安心です。
さてカレンデュラ油の用い方の応用としてカレンデュラ軟膏の作り方をご紹介しましょう。材料としてカレンデュラ油25mlとミツロウ(ミツバチの巣から得られる天然のロウ物質)5gを用意します。ミツロウを60度ほどの湯煎にかけると溶けてやわらかくなります。そこにカレンデュラ油を加えてよく混和し、湯煎からはずして常温に戻すと軟膏状に固まります。軟膏ビンに入れ冷暗所に保存すれば防腐剤や保存剤などを加えなくても1ヵ月は保存できます。子供の切り傷や虫さされ、それにヒゲそり負けや、やけどなどの家庭用の万能軟膏として活用することが可能です。
カレンデュラ油の活用法
1.痔疾、静脈瘤の修復、保護に
●カレンデュラ油10mlにラベンダーのエッセンシャルオイル4滴を加え、よく混和した後、清潔にした患部にやさしく塗布します。
●ラベンダーは鎮痛、消炎作用があります。
2.胃炎、胃潰瘍の痛みに
●カレンデュラ油10mlにローマンカモミールのエッセンシャルオイル4滴を加え、よく混和した後、痛みのある患部の周辺をやさしくマッサージします。
●ローマンカモミールには鎮痛、鎮痙作用があります。
3.生理痛、生理前症候群の痛みや不快感に
●カレンデュラ油10mlにクラリセージのエッセンシャルオイルを四滴加え、よく混和した後、下腹部を時計まわりにやさしくマッサージします。
●クラリセージにはホルモン分泌調節作用があります。
4.妊娠線(ストレッチマーク)の予防に
●カレンデュラ油の10mlにネロリのエッセンシャルオイルを2滴加え、よく混和した後、気になる部分にやさしくすり込みます。
●ネロリには新陳代謝を促す作用があります。