ジャスミン
極度の肉体的な苦痛や痛みなどを回避し、
反対に法悦を与えてくれるエドルフィンなどの物質は神がヒトに与えた
究極のナチュラルメディスンです。
そしてそれらの分泌を引き起こす引き起こすひきがねを、
花の香りが握っているのかもしれません。
林真一郎(薬剤師 グリーンフラスコ(株)代表)
ジャスミンはインド・ヒマラヤが原産でフランスやモロッコでも栽培されるモクセイ科の木本です。ジャスミンの香りがインドで「林に注ぐ月光」と呼ばれるのは、夜になると一段と強くなる豊潤な香りを表したものと言えます。
ジャスミンのエッセンシャルオイルがたいへん高価なのは、精油1kgを得るのにジャスミンが1t、花弁にして800万個も必要であることによります。
これだけでもジャスミンの精油がいかに貴重なものであるかをご理解いただけると思います。
アロマテラピーで用いられる精油にはオレンジ、ベルガモット、グレープフルーツなどのかんきつ系の精油のように気持ちを明るくするものがあります。
したがってこれらは主に心身の疲労の回復や気分転換を促す目的で用いられます。一方、バラやジャスミンはこれらの働きに加えて高揚感や多幸感をもたらすものとして、様々なストレスによる複合的な抑うつ状態を脱し、生きる勇気と希望を与えてくれる働きを期待して用いられます。西洋のバラが女性性の象徴として主にご婦人方に好まれるのに対し、東洋のジャスミンは男性にもたいへん好まれるため、ばらが 「精油の女王」と呼ばれるのに対しジャスミンは「精油の王」と呼ばれています。
ヒトがいわゆるハイな状態にあるとき、脳内にはエンドルフィンなどの神経伝達物質(生活性物質)が分泌されていると思われます。極度の肉体的な苦痛や痛み、強度の抑うつ状態など生命の危機とも言える状態を回避し、反対に法悦を与えるこれらの物質は神がヒトに与えた究極のナチュラルメディスン(自然薬)とでも言えるでしょう。そしてそれらの分泌を引き起こすひきがねを、かぐわしい花の香りが握っているのかもしれません。
アロマテラピーによる治療では、ジャスミンは主に心因性の性機能障害や強度の自信喪失に用いられます。視覚・聴覚・皮膚感覚などの感覚刺激が大脳皮質を経 て情動を司る大脳辺縁系に入るのに対し、嗅覚刺激だけは大脳皮質を通過せずに直接、大脳辺縁系に入ることが知られています。(大脳辺縁系が昔、嗅脳と呼ばれていたのはこのためです。)大脳皮質は動物としてのヒトを人間たらしめる高度の精神活動を司る部位ですから、逆に言うと五感の中で最も本能に近いのが嗅覚であるということになります。さらに本能の中で最も強いのは生き抜くということ、即ち個体維持としての摂食行動と種族維持としての生殖行動と言えます。 人間にいわゆるフェロモンがあるかどうかという論争には決着がついていませんが、植物のかぐわしい香りによって生殖行動に影響が及ぼされるかどうかは、あ ながち「気のせい」ばかりとは言えないようです。
1.芳香浴
エッセンシャルオイルの香りを香炉や芳香器で空気中に揮発させる方法です。
▼使用法:香炉の上部の皿に少量の水を入れ、そこにエッセンシャルオイルを2~3滴たらします。しばらくすると香りが漂います。
★例:不安や緊張が強いときに寝室で行うと入眠を容易にします。寝室では火を使わない電気式の芳香器を用いると安心です。
2.オイルマッサージ
エッセンシャルオイルを植物油に希釈して、それをマッサージすることにより皮膚から体内に浸透させます。
▼使用法:ホホバ油10mlにエッセンシャルオイル2、4滴の割合で希釈してマッサージオイルを作り、お風呂あがりにマッサージしてすり込みます。
★例:ストレスによる体のこわばりや痛みに対してマッサージしてすり込むと筋肉の緊張を和らげ、こりや痛みを解消します。。
3.自然香水
アルコールにエッセンシャルオイルを溶解させることによって手作り香水を創作することができます。
▼使用法:無水エタノールまたはウォッカ5mlにエッセンシャルオイル1滴をたらして完全に溶解させ、香水ビンに入れて保管します。
★例:不安や恐怖、悲観的傾向が強いときに香水の要領で用いたり、手首や耳の後ろに1滴すり込みます。いつもハンドバッグに入れておくと精神的に落ち着くことができます。