各分野で活躍する東京衛生学園リハビリテーション学科OBに統合リハヘの可能性を聞く
診療報酬改定で病院でのリハビリは脳血管、運動器、呼吸器、心大血管の四疾病領域だけが対象となり、リハビリ治療が受けられる日数の上限に枠がはめられた。リハビリを行う理学療法士も四大疾患それぞれへの専門性を求められるとともに、急性期、回復期、予防期という疾病の流れにトータルに関わることが困難になってきた。また介護施設でのリハビリや訪問リハビリなどリハビリの環境も急速に変化している。このような状況のなか、各リハビリ施設で活躍するOBを訪ねた。
若杉一也さん (医療法人財団仁医会牧田総合病院リハビリテーション部長)
医療施設と介護施設の連携とスタッフカンファレンスが求められ始めた
若杉一也さん
私の勤務する牧田総合病院は、大田区の地域中核病院として地域密着型の医療を行っています。とくに脳卒中治療に力を入れていており、脳卒中センターには急 性期に対応する脳卒中専用治療室(SCS)が置かれています。医師、看護師、放射線技師と私たち理学療法士が一丸となって、専門化された脳卒中のチーム医 療を行っています。脳卒中センターでは、急性期から回復期リハビリテーションまでを病院内で一貫して行える病院完結型脳卒中治療を標榜して、地域住民の方 々から高い評価を得てきています。
先の診療報酬改定で、リハビリに関する180日という日数制限が設けられたことで、病院完結型脳卒中治療の回復期リハビリに大きな影響が出てくる可能性が あります。一般例ですが、急性期治療を終えて自分で起き上がり、機能復帰へのモチベーションが出て、回復期リハビリに至るには1ヶ月くらいを要します。し かし回復期リハビリの現場では、患者さんそれぞれの進みぐあいが、個人差となって現れてくるわけですから、時間や日程でくくることはできません。あらかじ め日程を決めてリハビリを行うと、機能がもっと良くなる可能性が見えているのに時間切れとなり、機能向上の途中の状態で機能維持のほうに向かう恐れがあり ます。
牧田総合病院 脳卒中センター
ですから牧田総合病院では、医療福祉部・地域支援課を設け、退院された患者さんに対して、地域病院の診療連絡や病床連絡、介護施設への紹介などとともに、医師の往診診療、訪問看護、訪問リハビリの充実にむけて取り組んでいます。
ま た、家庭に戻られた患者さんには私たちのスタッフのほかにも医療、福祉、介護の領域などから訪問マッサージ、訪問鍼灸、ヘルパー、ケアマネージャーなど様 々なスタッフも参加してきます。スタッフ間の専門性を尊敬し合ったカンファレンスもこれからは大変重要になってきます。
本来なら医療スタッフ全員が環境の整った場所で、ケアを手厚く効率よく行える医療がベストですが、そう言ってもおられません。地域の住民の方々が安心して治療に専念できるようにと考えています。