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認定看護師からの報告 – 3

重症集中ケア認定看護師

久保亜希子さん (東邦大学医療センター大森病院看護師長補佐・看護師歴20年目)


私は病棟勤務中にICU(集中治療室)、CCU(冠動脈疾患集中治療室)の専門教育課程を受講後救命センター勤務ずっと病棟勤務をしていました。その中 で、あるとき病院から、「重症集中ケアの認定看護師資格を取得してはどうかと」と求められました。「重症集中ケアとは救急ケアのこと」と考え、「自分のや りたいこととはと違う」と悩んでいたのですが、看護部長から「重症集中ケアは初療部門ではなく、救急に限らず内科でも外科でも一時患者さんが重症化した場 合の集中的なケアに対応する専門看護」であり、認定を受けることで仕事の領域が広がって、より充実した看護人生につながるとアドバイスされて、2000年 度に認定看護師を取得しました。
認定看護師のコースで学んだことはまさに「目からうろこ」で、私が「これが普通の看護」と思っていたことがしばしば全然違っているということにショックを受けました。そこでは医学的知識を背景にしながら、治療だけでなく看護によって、患者さんの回復過程に何がもたらされるかということを知る機会になったのです。その中で、それまで全然考えられなかった「家族の看護」ということを教わりました。
たとえば一家の大黒柱ががんになったりすると、配偶者が心配のあまり精神的に不安定になってしまうというケースが少なくありません。患者さんを支える役割を持つはずの家族の不安が強いと、家族全体が危機的状況になります。患者さんが治っていくためには家族が良きサポーターになることも必要であり、私たちが家族を含めたケアを行うことで、家族の危機を乗り越えてもらうことにつながるかもしれません。
家族に対する心のケアとして、心理学的なテーマも取り入れられていました。また、たとえば家族が医師の治療方針に納得できないような場合、看護師がそのことを伝える役割を持つなど、医師と家族の調整役としての看護師のあり方などについて学びました。
医療はどの分野にあっても患者さんを全人的にとらえるということが必要だと感じました。急性期の患者さんもそこだけを乗りきればいいということではなく、患者さんがどういうかたちで元の生活に戻っていくかということが問われます。それに伴って家族の負担はどうなるのかということまで見据えた看護が求められているのではないでしょうか。
看護はフィジカルアセスメントができないとできません。勉強すれば勉強するほど、看護の基本は同じであることがわかってきます。ホスピスでも救命でも部署を問わず、根底にあるものは変わりません。
救急医療などに憧れて入ってくる若い人がすごく増えていますが、何も現場を経験していないのに、まず人工呼吸器の操作を覚えるといったことが優先されます。そのため根底にあるものが忘れられていたりすることがあります。患者さんや家族の気持ちがわかっていないのではないか、ということをよく目にするのです。
救急の患者さんは意識がなかったり、鎮静剤によって寝ていることが多いのですが、ともすれば手荒な扱い方で業務をこなそうとする例に気づきます。たとえば心筋梗塞の患者さんは応急治療したあとも急性期のうちは(血清酵素が上昇しているあいだは)安静が必要なのですが、この状態でルーティン通りの清拭をしようとしたりすることがあるのです。専門分野の認定看護師だったら検査データを把握して、患者さんに「まだ安静が必要です」と説明して患者さんの協力を得ることが欠かせません。
看護師はどんな状況であっても患者さんの立場にたって考えることを忘れないでほしいと思います。それ忘れないためには、ともかく患者さんに関心を持つことが大切です。