岩走る
残暑の中、一筋の清流を求めて渓谷へと分け入った。
まわりは鬱蒼と茂った木々に覆われていた。微かに差す木漏れ日と谷底から聞こえる水の遠い音を頼りに、下へ下へと降りていった。
川岸に着くと小さな架け橋があり、そこで犬を連れた若い夫婦に出会った。
来た方を指差し「道は険しいけど滝がありますよ」と声を掛けられた。
やっとのことでたどり着くと、緑に覆われた断崖から幾筋にも分かれた水が滝となって流れ落ち、キラキラと飛沫が舞っていた。
傍らの石に座っていると、なんとも心地良く、清廉な気に包まれているように感じられた。