ナイルブルー
カイロのスーク(市場)の喧噪を逃れて、エジプト文明の遺構ギザのピラミッドやルクソール神殿を巡り歩いた。いまだ解明されないピラミッドの謎、林のように乱立する神殿の石柱など、エジプト文明という迷宮に迷い込み、軽いめまいのようなものに襲われ続けていた。
気晴らしにルクソールの丘を登ると、眼下にナイルの青く流れるのが見えた。両岸にはナイルから滲み出たように緑地帯がか細く続く。その青さに見入っていると下の方からナイルの風が心地よく吹きつけてきた。
ふと気づくとガラベーヤを着込んだ男がどこからともなしにやって来て「バクシーシ」(恵んでくれ)といいながら手を差し出した。ポケットから小銭を取り出して渡すと彼は手に握っていた小さなスカラベを1個くれ「インシャラー」(アラーのご加護がありますように)といいまた何処へともなく立ち去っていった。