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正しい健康情報を選ぶ

4月からメタボリック予防のための健診と指導が始まった。
厚生労働省は予防重視で医療費の圧縮を狙う。
病気にならない身体を作るにはどうするか、予防や健康のためのサイトを紹介する。

吉村克己 (ルポライター)

生体時計は1日25時間

メタボリック(内臓脂肪)という言葉がすっかり世の中に定着した。毎日のようにこの言葉が新聞に載るようになり、4月からはメタボリックシンドローム予防のための特定健診・保健指導が始まった。
厚生労働省とすれば、肥満を防いで成人病などを減らし、医療費を圧縮する狙いがあるが、病気の予防はもちろん私たちにとっても歓迎すべきことである。
厚労省の委託を受けて健康・体力づくり事業財団が運営する「健康ネット」では、健康づくりに関するさまざまな情報がコンパクトに分かりやすくまとめられている。「健康づくり情報」のコーナーを見ると喫煙と健康、肥満、がん、からだの知識、心の健康、脳卒中と心臓病などについて、豊富な情報がある。
たとえば、喫煙がなぜ健康に悪いのか、そのメカニズムが解説されている。1日に20本のタバコを吸えば、約2時間、寿命を縮めるというのだから恐ろしい。
面白いのは「からだの知識」にある「生体リズムと健康」。研究によると生体時計は1日を25時間で刻んでいるそうで、これを地球の自転の24時間に無理やり合わせているのだという。
人がそれを調整する信号として使っているのが光で、同じ時間に毎朝起きて光を浴び、朝食をとるなどのリズムを作ることが大切だという。このリズムが壊れると身体が不調に陥り、病気になるというのだから、夜更かし・朝寝坊は病気の元といえそうだ。
このほか、「健康クラブ」というコーナーでは、家でできる運動や、血圧、肥満度、食生活、ニコチン依存度、食事量など簡単に診断できるプログラムもあるので便利だ。健康ネットは健康一般について知るには最適だろう。

注目のアンチエイジング
近年、「アンチエイジングドック」が注目されている。
これは「老化の兆候や老化へと向かう危険因子をいち早く見つけるための検査」を指す。アンチエイジングドックでは現在の「老化度」(血管年齢、ホルモンバランス、筋肉・体脂肪年齢、骨年齢など)と、今後の老化を促進する因子「老化危険因子」(酸化ストレス、心身ストレス、免疫機能、代謝機能、生活習慣、有害重金属量など)を調べる。
NPO法人アンチエイジングネットワークの運営するホームページでは、その解説やアンチエイジング医療機関を地域別に検索できるデータベースもある。アンチエイジングネットワーク事務局の松本理恵さんはこう語る。
「私たちには、二つの年齢があると考えています。その一つは、暦年齢、つまり生まれてからの年数です。もう一つは、生物学的年齢です。暦年齢が同じ同級生でも、顔にシワやシミがある人もいれば、何歳も若く見える人がいます。
高血圧や動脈硬化といった生活習慣病に悩む方もいれば、まったく健康に問題がない人がいます。できるだけ長い時間、若々しく活躍し続けるためには生物学的年齢を若く保ち続けることが重要です。ならば、何をしたらよいのか、そしてその方法を、より多くの皆様に知っていただきたいと考えています」
ホームページではアンチエイジングドックのみならず、美容も含めたアンチエイジング全般について詳しい情報が掲載されている。
「アンチエイジング三大対策」として活性酸素から身体を守る「抗酸化」、身体から毒素を排出する「デトックス」、加齢とともに不足するホルモンを補う「ホルモン補充」が重要だと書かれている。
サプリメントなどもむやみにとるのではなく、こうした老化のメカニズムを知ったうえで、必要な物質を摂取するべきだろう。
ただし、老化を止めるという発想ではなく、「100歳を過ぎても痴呆や癌がなく、介護状態にならず、健康的に暮らしている人々を調べると、血管、筋肉、骨、神経など身体の各部分がバランス良く老化して」いるとホームページに解説されているように、バランスよく老化することがポイントだ。
松本さんによれば、アンチエイジングネットワークが主催するセミナーへの参加者は年々増えており、2003年は123名だったが、昨年11月には366名になり、現在、メールマガジンには約3万5000名が会員登録しているという。今後もアンチエイジングに注目したい。
食と人間の関係性が重要
健康や病気予防で重要なことはやはり「食」だろう。
厚生労働省所管の独立行政法人国立健康・栄養研究所のホームページには、右側のトピックスのところに「『健康食品』の安全性・有効性情報」というコーナーがある。
この中に「話題の食品・成分」があり、健康にいいと話題になっている食品や成分が本当に有効なのか、害はないのかについて同研究所が詳細に調査した結果が載っている。
たとえば、「免疫力を高める」「鎮痛・抗炎症作用がある」などと効能が宣伝されているゲルマニウムだが、研究所の調査レポートでは「生死に関わる副作用が起きる可能性が否定できません」とあり、ゲルマニウム添加製品の積極的な利用は勧められないと結論している。
また、「素材情報データベース」では、さまざまな原材料に関する概要、有効性、安全性、総合評価が掲載されている。たとえば、「イソフラボン」は、血清脂質、更年期の血管障害に対する有効性では、ポジティブとネガティブの両方の結果があり、さらに科学的な根拠の蓄積が必要だと書かれている。
健康食品の宣伝文句に惑わされず、こうしたサイトで確認してから利用したい。
有効性があやしい面もある健康食品に比べて、近年、その栄養価や健康への効果が注目されているのが雑穀だ。
アワ、ヒエ、キビなど日本人が縄文時代の昔から主食としてきた雑穀にはミネラル、ビタミン、食物繊維などが豊富で、血糖値や血中コレステロールの抑制、脂質代謝改善機能の向上、動脈硬化の予防、発ガンの抑制などの効能があるといわれている。
この雑穀の魅力にとりつかれ、30歳を機に肉と魚をやめ、雑穀や白米、野菜を中心とした食に切り替えたのが大谷ゆみこさんだ。以来、25年以上も雑穀生活を満喫し、夫と28歳の長男以下四人の子供と病気知らず、医者いらずの日々を送っているという。
「雑穀は人間が本来持っている生きる力を引き出してくれるんです。いまの健康志向や健康ブームは身体や心をマイナスの状態からゼロに戻すような考え方ですが、雑穀中心の食生活にすると、元気があふれ出て止まらないという感じになり、やる気や愛情、感謝の気持ちなどが自然に出てくるのです」
大谷さんはこうした雑穀のよさを広く伝えるために、NPO法人「いるふぁ」を設立し、雑穀に「つぶつぶ」という愛称をつけて、数千点におよぶ雑穀と野菜のレシピを作り出した。
2003年には『つぶつぶ』という雑誌を創刊、現在7000部を発行、レシピなどを紹介している。また、東京や長野に大谷さんの作り出した料理を楽しめる「つぶつぶカフェ」も開いている。「つぶつぶ」のホームページにはこうしたレシピが掲載されている。
たとえば、「もちキビと葛のブリック」は春巻きの皮に炊いたもちキビと練り葛を入れて、油でからっと揚げた料理。
大谷さんのレシピは油も塩もたっぷり使う。
「じつは減塩と油抜きが身体によくないのです。動物性の油はいけませんが、菜種油と自然塩は十分とったほうがいいのです。減塩、油抜きでは料理もまずくなりますしね。若い女性がこれをやるとすぐ体調を崩し、気力も減退します」と大谷さんは警告する。
塩分は高血圧を引き起こすことが一般的な常識になっているが、食塩摂取と血圧は関係がないとする説や、不必要な減塩強制は無気力を招くという説もある。
この3月には最新著『雑穀グルメ・ダイエット』(サンマーク出版)が発刊されたので、興味のある方は手に取ってみてはどうだろうか。
大谷さんは「栄養素がどうのこうのという前に、食べ物と人間の関係性を見直す必要があります。食べ物は〝燃料〟ではないのです」と言う。
食は本来、生物の自然な営みだ。人間はこれを産業にしてしまった。食本来の意味をもっと考えるべきだろう。
健康・体力づくり財団
アンチエイチングネットワーク
国立健康・栄養研究所
いるふぁ