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中医診療日誌 – 9

喘息(ぜんそく)腎の陽虚を補う処方で小児性も老人性も改善

喘息の患者は小児と老年層に集中しやすいが、中医学によれば腎に問題がある年齢層であるためと解釈できる。また、現代医学は喘息を原因によって、アレルギー型、感染型、中間型と分類しているが、このことも腎の不調から説明できる。腎の陽虚を補う漢方薬の処方は、現代医学の先端治療でも改善できない症例に対して、慢性の気道の炎症を和らげる効果を示す。

平馬直樹 (ひらまなおき)
1978年東京医科大学卒業後、北里研究所付属東洋医学総合研究所で研修。87年 より中国中医研究院広安門医院に留学。96年より平馬医院副院長、兼任で、後藤学 園附属入新井クリニック専門外来部長として漢方外来を担当。

医療界に漢方の力を示した分野

喘息というと、「アレルギー疾患なので現代病だ」というふうに考えられがちですが、じつは古くからある病気で、中国医学でも治りにくい反復性の呼吸器疾患 の代表とされています。それに、確かにアレルギーが関与する病気ではありますが、すべての喘息がアレルギーで起こるわけではありません。
喘息はの どの気道が狭くなるために呼吸が苦しくなる病気といえます。最近の研究では、「アレルギー型」の喘息はもともと気道の炎症が潜在的にあって過敏になってい るところへ、ホコリとかダニ、タバコの煙、冷たい空気、気温差、気圧の変化など吸入によるいろいろな刺激が加わって発作を起こすことがわかってきました。
一方では、風邪をひいたりしてのどの付近が過敏になるために起こる「感染型」の喘息があることも知られるようになっています。さらにこれら両タイプを兼ね備えた「中間型」の喘息がむしろ多数を占めているということもわかってきました。
喘息に対して現代医学は、以前はもっぱら気管支拡張剤という薬を用いていました。ところが、この薬はアレルギー型の喘息の発作時の症状を和らげることはできるけれど、成績不十分だったのです。
そこへ1977年に漢方薬のエキス剤が保険製剤として使われるようになり、小青竜湯や麻杏甘石湯という薬が、現代医学が苦手としていた感染型・混合型の喘息によく効くことが知られるようになりました。このことは当時、漢方が慢性疾患に有効であることを医療界に認識させる原動力の一つとなりました。
最近では現代医学の喘息の治療は、ステロイド吸入薬を使って慢性の気道の炎症状態をコントロールすることが基本になってきました。確かにこの治療法は発作を少なくするうえでは貢献しています。それでもこうした現代医学の治療では十分コントロールできない喘息はたくさんあり、その治療を漢方が引き受けていることが少なくありません。漢方は現代医学の薬が働く機序とは違い、体質そのものを変えて慢性の気道が過敏な状態を、時間をかけて治していく力があるのです。

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原因は肺と腎の協調不全

喘息というと、「アレルギー疾患なので現代病だ」というふうに考えられがちですが、じつは古くからある病気で、中国医学でも治りにくい反復性の呼吸器疾患 の代表とされています。それに、確かにアレルギーが関与する病気ではありますが、すべての喘息がアレルギーで起こるわけではありません。
喘息はの どの気道が狭くなるために呼吸が苦しくなる病気といえます。最近の研究では、「アレルギー型」の喘息はもともと気道の炎症が潜在的にあって過敏になってい るところへ、ホコリとかダニ、タバコの煙、冷たい空気、気温差、気圧の変化など吸入によるいろいろな刺激が加わって発作を起こすことがわかってきました。
一方では、風邪をひいたりしてのどの付近が過敏になるために起こる「感染型」の喘息があることも知られるようになっています。さらにこれら両タイプを兼ね備えた「中間型」の喘息がむしろ多数を占めているということもわかってきました。
喘息に対して現代医学は、以前はもっぱら気管支拡張剤という薬を用いていました。ところが、この薬はアレルギー型の喘息の発作時の症状を和らげることはできるけれど、成績不十分だったのです。
そこへ1977年に漢方薬のエキス剤が保険製剤として使われるようになり、小青竜湯や麻杏甘石湯という薬が、現代医学が苦手としていた感染型・混合型の喘息によく効くことが知られるようになりました。このことは当時、漢方が慢性疾患に有効であることを医療界に認識させる原動力の一つとなりました。
最近では現代医学の喘息の治療は、ステロイド吸入薬を使って慢性の気道の炎症状態をコントロールすることが基本になってきました。確かにこの治療法は発作を少なくするうえでは貢献しています。それでもこうした現代医学の治療では十分コントロールできない喘息はたくさんあり、その治療を漢方が引き受けていることが少なくありません。漢方は現代医学の薬が働く機序とは違い、体質そのものを変えて慢性の気道が過敏な状態を、時間をかけて治していく力があるのです。

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老化による腎の衰えに八味地黄丸

2001年の秋、68歳の男性患者Eさんが来院されました。それほど寒い時期ではないのに真冬のような厚着をし、顔色は青白く、痩せておられます。呼吸困難が主訴で、腰のだるさも訴えられました。
数年前の冬、Eさんは風邪をこじらせたことから咳がずっと止まらず、春になっても時折咳き込む状態が続いたそうです。寝ている最中に発作が起きて目覚めて しまうこともしばしばで、また、動くと息苦しさを覚えるようになりました。内科を訪れて「喘息」との診断を受け、以降気管支拡張剤の投与など現代医学の治 療を受けています。
ところが、息切れの激しさは続き、階段や坂道なども途中休み休みでないと上がれないという状態になりました。とくに冬になると風邪をひきやすく、そこからよく発作を起こしました。前の冬には発作がひどくて入院して点滴を受けています。
Eさんは痰はそれほど粘っこくなく薄くて切れやすいのですが、「うまく出せずに苦しい」と訴えられました。また寒がりで厚着をするため、汗をかきやすくそのためかえって冷えて風邪をひきやすいというところもあるようです。聴診すると両肺野とも弱いわずかな喘鳴音が聞こえ、息を吸うのが苦しいとのことでした。舌を診ると薄い赤みのある淡という状態で白い苔が現われています。また脈は細くて力がありません。
これらのことからEさんは、虚実からいえば虚のタイプで、年齢的なことや腰がだるいこと、寒がりということなどから、やはり腎の衰えがうかがえました。腎がうまく気を納めることができない腎不納気証で、腎の陽気が衰えて虚になっていることが喘息に対する抵抗力が衰えた大きな原因だろうというふうに考えられます。
そこで治療としては、腎をまずしっかり強化するということが基本になると考え、腎の陽虚を補う八味地黄丸という薬をもとに、肺気を整える桔梗と杏仁を加えて処方しました。するとEさんはだんだん身体がぽかぽか温まるようになり、全体に元気になってきたのです。そして、冬季には風邪をひいて発作を招きやすく現代医学的な治療を受けなければならなかったのが、発作の頻度も減り、入院などの大事には至らずこの冬は乗り切ることができました。投薬は引き続き行い、さらに体質を改善するようはかっています。

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胃腸が弱いタイプに六君子湯

8歳のC子ちゃんは2歳くらいの時に突然喘息の発作が始まったそうです。風邪をひきやすくてそれとともに発作に見舞われることが多い子でした。
C子ちゃんは痩せていて発育がちょっと遅れ気味です。胃腸が丈夫ではなく、好き嫌いも多くてあまり食べません。元気がないのでお母さんがさかんに「食べなさい」と言い、食事のたびに2人はけんかをしなければなりませんでした。また、子供なのに寒がりで厚着が必要で、風邪を引くと痰がからんで発作を起こしやすくなります。
東洋医学で胃腸は脾といい、彼女はまさしく脾虚と呼ばれるタイプです。そして、脾と肺を強化するというのがこの患者さんに対する治療方針となりました。胃腸を丈夫にして痰が溜まりにくくする薬として六君子湯という処方をしました。また肺に溜まった痰を取り去って肺気を強化して呼吸を安定させる作用がある薬として、苓甘姜味辛夏仁湯という処方を加えました。

この2剤を合わせて飲み始めて3ヵ月くらいのうちにだんだんC子ちゃんもひどい発作が起こりにくくなってきました。食欲がだいぶ出てきてご飯をお代わりもするようになっています。
こ うして、ほぼ半年くらいで肺気を整える薬はほとんど必要がなくなり、六君子湯だけの投与を続けました。一方、冬の風邪をひきやすい時期には予防のために桂 枝加黄耆湯という薬を加えています。現代医学はどうしても発作そのものに目を向けてその治療に集中しがちですが、中国医学は背景になる体質を改善する処方 を続けることになります。
C子ちゃんは風邪もひきにくくなり寒がりも徐々におさまっていきました。体重も1年間で数キロ増え、体格もしっかりしてきて、もはや発育の遅れはあまり感じさせないほどになっており、お母さんもとても喜んでおられます。

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