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薬効と芳香の両面で消化器系にやさしい働きかけ

ジャーマンカモミール

薬効と芳香の両面で消化器系にやさしい働きかけ
ジャーマンカモミールティーはローリング療法による直接作用と
アロマテラピーによるストレス緩和の複合作用をもたらします。

林真一郎(薬剤師 グリーンフラスコ(株)代表)

カモミールにはジャーマンカモミールとローマンカモミールの2種が知られていますが、ローマン種は飲み続けるとのどに刺激を感じることがあり、またジャーマン種の効果が確定しているためメディカルハーブとしてはジャーマン種が用いられます。
ジャーマンカモミールはわが国ではカミツレ、スペインではマンサニーヤなどさまざまな呼び名を持ち、世界中で最も親しまれているハーブのひとつです。ピーターラビットの童話にも登場するこのハーブはキク科に属し、デイジーによく似た外観を呈しています。


カモミールの語源でchamai(大地の)とmelon(リンゴ)から成るように、ほのかに野生のリンゴの香りを漂わせます。また学名の matricariaはラテン語のmater(母)とmatrix(子宮)を意味することからわかるように、ヒポクラテスの時代から冷え症や生理痛などの婦人科系の症状に処方されてきました。さらに消炎成分のアズレンを含むため、胃潰瘍や胃炎など消化器系の炎症にも著しい効果を示します。
通常のハーブティーでは、ハーブの有効成分が体内に吸収され、血液循環によって患部まで運ばれ効果を発揮するのに対し、消化器の症状にジャーマンカモミールを用いる利点は、胃粘膜などの患部に有効成分を直接作用させることができるということです。

このような利点を生かした医療テクニックにジャーマンカモミールのローリング療法があります。これは胃潰瘍や胃炎の患者が早朝や就寝前などの空腹時にジャーマンカモミールのハーブティーを服用し、そのまま横になって床に体をごろごろと回転させ、ハーブティーを炎症部に接触させる方法をいいます。通常ハーブティーは熱湯を用いて抽出しますが、熱い湯は粘膜に刺激を与えるのでこの場合はやや冷ましてから服用します。

さてハーブティーの内服効果以外のもうひとつの効能にハーブの持つ快い香りの働き、つまりアロマテラピー効果があります。ジャーマンカモミールのおだやかな香りは鎮静作用を発揮し、潰瘍の原因であるストレスを和らげ、緊張した心と体に安らぎをもたらしてくれます。したがって胃潰瘍に限らず心身症全般に対してハーブティーはたいへん有効なアプローチになり得るのです。
さらに暮らしの中でハーブティーを飲む習慣を身につけると、緊張続きだった生活に正しいリズムが回復し、生活の質を高めることができます。このようにハーブティーは内服による体への作用だけでなく、心への作用やストレス社会に適応する正しいライフスタイルの入り口になるなど、さまざまなレベルに働きかけるホリスティックな療法であると言えるのです。

1.ハーブティー

●冷え症や生理痛に
ジャーマンカモミール小さじ一〜二杯を熱湯200mlで3分間抽出し、1日3回毎食後に服用します。好みによりハチミツを加えるとおいしくいただけます。

●不眠症や神経過敏に
牛乳200mlにジャーマンカモミール小さじ二杯を加え、弱火にかけてじっくり煮出します。ジャーマンカモミールの鎮静作用と牛乳中のカルシウムやアミノ酸のトリプトファンの鎮静作用が相乗効果を発揮します。

●胃潰瘍や胃炎に
ジャーマンカモミール小さじ一杯とネトル(西洋イラクサ)小さじ一杯をブレンドし、熱湯200mlで3分間抽出して、やや冷ましてから空腹時に服用します。ジャーマンカモミールの消炎作用とネトルの組織修復作用が相乗効果を発揮します。またネトルは鉄分を豊富に含むため、粘膜の出血で失われた鉄分を補給し、貧血を予防します。

2.湿布

●アトピーやおむつかぶれに
ジャーマンカモミール10gを熱湯500mlで3分間以上抽出し、冷ましてからガーゼや布で患部を湿布します。湿布液は入浴剤としても使用できます。