今夏もまたO-157が各地で広がりそうな気配だ。
性的接触によるHIVの感染も着実に増えているという。
海外旅行者が増え続ける昨今、感染症に対する意識の国際化も要請されている。
吉村克己(ルポライター)
猛威を振るったインフルエンザ
昨年はインフルエンザが猛威を振るい、老人ホームのお年寄りを中心に被害が広がった。2年前の95年にもインフルエンザは日本列島を襲い、100人以上もの乳幼児がインフルエンザ脳症に罹るという悲劇を生んでいる。目に見えないウイルスや細菌が絶えず我々を狙っている。
今回はインターネットによって感染症の情報にアクセスしてみた。まずインフルエンザの情報を探して、厚生省のホームページから入ってみる。
「報道発表資料」の中に今年1月、何件か関連情報が発表されている程度だったので、「関係ホームページへのリンク」から研究機関を探すことにする。まず「国立感染症研究所」(旧・国立予防衛生研究所)の名前が目に付いた。メニューページから「病原微生物検出情報」を覗くと、「ウイルス・細菌月別検出状況」が載っていた。
待ってましたとばかりにクリックしたものの少しがっかりした。主要ウイルスや細菌の国内外の検出状況など一覧表になっているのだが、英文の学術用語ばかりで、専門的すぎて分かりにくい。素人向けに専門用語の解説を付けてくれてもよさそうなものだ。
同研究所のリンクからO-157の情報を探るため「東京都健康安全研究センター」(旧:東京都立衛生研究所)に飛んだ。
「腸管出血性大腸菌O-157」の項目を見つけた。このページは簡潔な説明と関連情報へのリンクがあって便利だ。今年度の発生状況を見るとほぼ日本全土にこの感染症が広がっていることが分かる。
メラトニンで狂牛病⁉
再び厚生省に戻ると、O-157については月別発生状況など詳しいデータを載せている。さて、この厚生省の今年三月の「報道発表資料」から気になる話題を見つけた。それは狂牛病とメラトニンの関連だ。メラトニンとは脳の中心にある松果体で分泌されるホルモンだが、アメリカで商品化され、癌・心臓病を予防し、時差ボケにも効くという”夢の万能薬“として大ヒットした薬である。
日本では製造・輸入ともに認可されていないが、この製剤は牛の松果体から作られており、狂牛病の原因となる異常プリオンに汚染されている可能性も否定しきれないという。アメリカへの日本人旅行客が気軽に入手している現状では見過ごせない発表だ。
このほか狂牛病について最新のニュースを知りたいときには日経BP社『日経バイオテク』の「狂牛病情報サイト」が便利である。
海外旅行では感染症に注意
ウイルスや細菌が日本人を襲う絶好の機会は海外旅行だ。労働福祉事業団の「海外勤務健康管理センター」では海外で発生する最新の感染症情報から予防接種、ファックスによる医療・健康相談など様々なサービスを提供している。
デング熱、コレラ、マラリア、黄熱病など危険な病気は世界に蔓延しており、アフリカの特定の国では複数の予防接種が必要なので計画的に接種しなければならない。
海外のサイトで感染症情報が豊富なのはアメリカのCDC(疾病対策センター)である。CDCのメニューには「Travelers, Health」というコーナーがあり、そこから「Graphical Trabel Map」をクリックすると世界地域別に感染症の状況を知ることができる。
そして病気・健康全般の情報を総合的に知りたければWHO(世界保健機関)のページにかなうサイトはない。
無防備な衛生環境で生活している日本人は、海外旅行の際に食料や水などによる経口感染も含めて、もっと感染症に敏感になるべきだろう。
国立感染症研究所