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「鐘」(しょう)金の音色

音楽家、劉宏軍さんが、中国で10年の歳月をかけ、正倉院に伝わる楽器を復元、唐時代の宮廷音楽の音色を現代によみがえらせる。

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劉宏軍 (Lyu Hongjum

中 国遼寧省大連に生まれ。国立中国歌劇舞劇院管弦楽隊に入り、フルート首席奏者などを務める。1980年の来日以来、中国民族音楽の研究・演奏・作曲活動を 行う。NHKテレビ「シルクロード遥かなる調べ」、映画「ラストエンペラー」の作曲・演奏を坂本龍一とともに担当。また、アジア諸国、太平洋諸島の民族音 楽の調査・研究・復元に情熱を傾けている。


中国の伝説時代に炎帝という神様がいる。
炎帝は人々に農業と、薬になる植物を教えたとされ、農業の神様、薬の神様として、現在でも「神農」の名前で親しまれている。この炎帝の曾孫にあたる鼓と延という2人が「鐘」という楽器を作り音楽を広めたとされる。
こ の話は単なる伝説にすぎないかもしれないが、殷・周時代になって青銅器が勃興すると、鐘が鋳造されていたのは確かで、中国の各地から発掘されて考古学的に も明らかになっている。西周時代になるとさまざまな音源を8種類に選別し、八音の音色として定められ、金の音として鐘があてはめられた。またこのころ大小 の鐘を作り、音律を整えて、それらを2段に架して並べ「編鐘 へんしょう」という楽器に仕立てられた。78年に河北省で発掘された編鐘は、総重量5トン半もあり、数も65個を1組にしたもので、その大きさから楽器と してばかりではなく祭器として、また権威の象徴としても使用されたことがうかがわれる。
この編鐘は朝鮮半島まで伝搬したが、ついに正倉院に伝わらなかったのは不思議なことだ。