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更年期を考える – 2

附属クリニックは「男女更年期障害」の
治療ニーズに二本立てで対応

「男性更年期」の概念は、1939年にアメリカのワーナー(A. A. Werner)という学者によって初めて提唱された。女性の更年期には卵巣の卵胞数の急激な減少がみられるのに対し、男性も加齢にしたがって性腺機能の低下がみられることに着目したものである。そして、男性にも、更年期の女性が訴える症状と同じような症状が現れることが示されている。
しかし、更年期は国際閉経学会でも「女性の生殖期から非生殖期への移行期」と定義されており、閉経という一つの指標がはっきり存在する。
一方、男性には女性の閉経期のような急激なホルモンの減少はみられず、性腺機能の低下は個人差が大きいため期間を特定しにくい現状だ。後籐学園附属クリニックの北田志郎外来診察部長に、臨床の立場から男性更年期といわれる時期の考え方と取り組み方を聞く。

北田志郎 (後藤学園附属クリニック外来診療部長)

更年期疾患だけではない

男性に更年期はない、という考え方もありますが、中年期から初老期の時期にかけて男性機能の低下に伴い心身に多方面にわたる不適応状態が現れることはよく 知られています。これを女性の更年期に対して、男性の更年期と呼ぶ動きが出てきていますが、医学界ではまだ確定されたものとはなっていません。マスコミ報 道が先行しているといえるでしょう。しかしこの時期を迎えた男性が身体になんらかの障害を自覚して、附属クリニックに「男性更年期障害」ではないかと不安 がって訪れるケースも多くなってきています。
この時期に男性が挙げる具体的症状として、前立腺肥大にともなう排尿障害に加え、精神症状である疲れ やすさ、不眠、抑うつ、集中力減退、また自律神経症状である動悸、めまいなど、泌尿器科領域や精神神経科領域などの症状が複合して現れることが多いのです が、これら個々の症状への対症療法にとどまらず、加齢という概念を加味して包括的にみていく診療が大切です。
加齢を加味して診ることは、幼年期か ら老年期までの身体状態を「ふしめ、ふしめ」でとらえなければならないと考えた『黄帝内経素問』(22頁参照)によるところで、更年期には衰えを覚え、老 いを感じやすくなっていますが、そのこと自体は疾病ではなく、人生の一様態と考えてみるのも必要だと思います。
現在男性更年期という考え方に注目 が高まっているのは、見方を変えれば現代社会が自然法則を逸脱した生き方を男性に要求することが多くなっているからともいえます。飲食の不摂生、不規則な 生活、増大するストレスなど、およそ人類の歴史において想像できなかったであろう要素が私たちを取り巻いています。さらに、ダイオキシンなどの環境ホルモ ンによるメス化が男性更年期障害の増加にかかわっているという考え方も示されるようになりました。

また男性更年期障害の治療法として男性ホルモン補充療法が広まりつつありますが、疾患部分だけを診るのではなく、生活習慣の見直しや、衰えや老いを受け入 れつつ豊かに生きるという発想の転換も大切なことと考えています。たとえば男性における早すぎる性欲減退、ED(勃起障害)なども含め、これらの症状は前 に述べたように包括的な治療の対象になります。男性更年期という概念を正しく理解することで誰にも相談できずに一人悩んだり、個々の症状に対していくつも の診療科を渡り歩いたりということはぜひとも避けなければなりません。
附属クリニックでは伝統医学における「養生学」の知見をもとにした「漢方外来」と、伝統医学の知恵を取り入れつつ心身両面からのアプローチを行う「生活習慣病関連外来」の二本立てで「更年期障害」の症状にお悩みの方のニーズに対応しています。