春は気候が暖かくなるにつれ、万物が活動を開始する季節です。人間の体内においても生理機能や新陳代謝が盛んになってきます。これらを円滑に行うためには十分なエネルギーが必要とされます。このエネルギーのもとになるのは食べ物。特にこの時期には、油っこいものや消化しにくいものを避け、あっさりとした味付けの消化しやすいものを食べるようにするとよいでしょう。これは春になって、エネルギーの消耗は大きくなってゆくにもかかわらず、臓腑の機能は十分に働ける状態になっていないため、脾や胃に負担をかけないようにするためなのです。この時期に十分な栄養をとらなかったり、胃腸に負担をかけたりすると、疲れやすい、カゼをひきやすいといったことになりがちです。
中医学の五行の考え方によると、春は肝を補うとともに来るべき夏に備えて脾を養うことがよいとされています。ところで、春は肝の気が旺盛になりがちですが、これが強くなりすぎると脾の働きを悪くしてしまいますので、肝の気をコントロールするには肝の血を補うことや酸味のあるものを減らすことが必要になります。これを補う食べ物としては、卵、レバー、ニンジン、ホウレンソウ、黒豆、牡蠣、豆腐などがあります。また、同時に脾の働きを助けるために甘い性質を持つ食べ物を積極的に食べたほうがよいとされています。これには米、小麦、豆腐、ヤマイモ、ナツメなどがあります。
また、春も深まり暖かさがしだいに増してきたら、甘みがあって脾を補いながらも、熱を少し冷ます「涼」の性質のある食べ物、例えば、セロリ、セリ、カブ、大豆、タケノコ、緑茶などがよいでしょう。
春野菜と豚レバーの炒め物
効能:肝血を養い、肝の気を押さえて春の体調整える。
応用:肝血不足によって起こる視力の低下や疲れ目、貧血、めまい、耳鳴りなど。
脚気などによるむくみや、尿量の減少など。
材料(3〜4人分)
豚レバー200g、セロリ3本、タケノコ1/2本、ニンジン1/2本。ショウガ(みじん切り)小さじ1杯、水溶きかたくり粉少々。レバーの下味用:ショウガの絞り汁少々、老酒少々。合わせ調味料:スープ大さじ一杯、しょうゆ大さじ1杯、オイスターソース大さじ1杯、砂糖小さじ1/2杯、塩少々、コショウ少々。
作り方
1.レバーは3mmくらいの厚さに切って、ショウガ汁を入れた水にさらして、水を換えながら20分くらいおいて臭み抜きをする。
2.レバーをざるに上げ、水を切って下味をつけ、10分くらいおいた後、軽く湯通しして水気を切る。
3.セロリ、ニンジン、タケノコは4cmくらいの短冊に切る。
4.中華鍋を熱し、大さじ1杯のサラダ油を入れ、ショウガを炒め、香りが出たらレバーを入れて強火で炒める。ニンジン、タケノコ、セロリの順に入れ、炒めた後、合わせ調味料を入れて味をからめ、溶きかたくりを入れて大きく混ぜる。
セロリ
五味・性味:甘・苦/涼
帰経:肝経に入る。
効能:肝の気を押さえ、熱を取り去る。血圧・血脂を下げる。湿を取り、膀胱炎を治療する。
応用
●高血圧:生セロリの絞り汁にハチミツを加え、1日3回40mlずつ飲む。または、セロリの根60gの煎じ液か、セロリ500gとニガウリ90gの煎じ液を茶代わりに飲む。
●セロリには血圧・血脂を下げる作用があるので、高血圧や高脂血症のものはこれを普段からよく食べるようにするとよい。また、膀胱炎などの尿路感染症や前立腺炎にもよいとされている。
タケノコ
五味・性味:甘、寒
帰経:胃、大腸経に入る。
効能:熱を取り、痰を切る。利尿作用があり、むくみを取る。下痢を止める。
応用
●黄色い痰の出る咳:タケノコと豚肉を一緒に煮て食べる。
豚のレバー
五味・性味:甘、苦、温
帰経:肝経に入る。
効能:肝を補う。体内の血液を増やす。視力の回復。利尿作用がある。
応用
●むくみがあって尿が出ない時:豚の肝臓3切れを緑豆半合と古米1合と共に煮て、粥にして食べる。
ニンジン
五味・性味:甘、平
帰経:肺、脾経に入る。
効能:脾の働きを良くし、消化不良を治す。目の乾燥を防ぎ、疲れ目や視力の低下をよくする。
応用
●小児の消化不良:ニンジン250gに塩3gを加え、煮崩して絞り汁を飲む。(1日3回、2日間続ける)
●夜盲症、目の乾燥:ニンジン6本を煎じて飲む。または、ニンジン3本を毎日10日続けて食べる。ニンジンと豚のレバーを一緒に煮て食べる。