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抑うつ感を吹き飛ばし、胃腸の痙攣を鎮める

ペパーミント

デリケートな女性を中心に広がる過敏性腸症候群に対しては、
ペパーミントの精油を処方したマッサージオイルで、
腹部をやさしくマッサージしてください。


植物は光合成という営みによって二酸化炭素と水を材料に、エネルギーを作り出して生活しています。一方、動物はこの機能を持たないため外部から食物を摂取し、それを体内で消化・吸収し、代謝の過程でエネルギーを作り出しています。したがって、私たちにとって消化とは、生命の維持に直結する大切な機能であると言えます。今回、ご紹介するペパーミント(学名 Mentha piperita)は消化器系の不調に卓効を示すハーブのひとつです。

ペパーミントの語源は、ギリシア神話に登場する妖精メンタに由来しています。冥界の神ハーデス(プルート神)の妃で嫉妬深いペルセポネは、ハーデスの心を奪ったニンフのメンタをいじめ、地面に踏みつけてしまいました。それを哀れに思ったハーデスは、メンタを魅力的な薬草の形に変えて、その地に復活させたということです。この神話で示唆するように、ミント類は並外れた生命力を持ち、交配種の数は3000種を超すと言われています。

ペパーミントはわが国でも薄荷の名で広く知られており、北海道の北見地方の特産である薄荷は一時、世界中に輸出されていたほどです。アロマテラピーの分野では食べすぎ、飲みすぎ、食あたりなどの胃腸の不快感、停滞感や夏バテなどの食欲不振時に、消化機能を活発にする目的で使用されます。


ストレス社会が進むなかで、新たな心身症の一種である過敏性腸症候群(I.B.S:Irritable bowel syndrome)が、デリケートな女性を中心に広がりつつあります。この症状は心の状態が消化器の働きにダイレクトに影響を及ぼす例であり、具体的には 便秘と下痢をくり返したり、下痢が何週間にもわたって続くなどの症状となって表れます。ペパーミントの精油の成分であるメントールは、感情レベルではさわやかな香りによって、抑うつ感やふさぎがちな心をクールに吹き飛ばす働きがあり、また身体レベルでは胃腸の痙攣を鎮める働きがあります。このためIBSに対して、ペパーミントの精油を処方したマッサージオイルで、腹部をやさしくマッサージする方法が知られています。英国ではIBSに対してアロマテラピーの分野だけではなく、いわゆる西洋医学の分野でも医師の処方のもとで、ペパーミントの精油を腸溶カプセルに充填して内服する方法が行われています。

ハーブというと「おばあさんの知恵袋」と言った古めかしいイメージや非科学的な印象を持つ方もいらっしゃいますが、欧米では自然療法の再評価が行われつつあり、西洋医学(近代医学)と自然療法(伝統医学)の併用や融合が積極的に取り組まれています。アロマテラピーやハーブ医学は、反西洋医学といった視野の狭い医学ではなく、古今東西の医学をつなぐ古くて新しい医学なのです。

アロマテラピー 暮らしの実践講座

1.蒸気吸入
エッセンシャルオイルの香りを嗅いで脳に信号を送る方法です。

▼使用法:ティーカップかボウルに熱湯を入れ、そこにエッセンシャルオイルを3、4滴たらします。蒸気と一緒に有効成分がお部屋いっぱいに広がります。
★例:オフィスや勉強部屋、車の中などでペパーミントの香りを漂わせると眠気を吹き飛ばし、集中力を高めることができます。

2.入浴(アロマバス)
エッセンシャルオイルを入浴時に用いる方法で、香りを吸い込むとともに皮膚からも吸収されます。

▼使用法:入浴時にバスタブに3、4滴たらして手でよくかきまぜてから入浴します。
★例:ややぬるめのお湯でペパーミントバスを行うとほてった体をクールダウンすることができます。

3.オイルマッサージ
エッセンシャルオイルを植物油に希釈して、それをマッサージすることにより皮膚から体内に浸透させます。

▼使用法:ホホバ油10mlにエッセンシャルオイル2、4滴の割合で希釈してマッサージオイルを作り、お風呂あがりにマッサージしてすり込みます。
★例:スポーツの後などの筋肉痛にペパーミントのオイルでマッサージを行うと、熱をとり、炎症を静めることができます。また、頭痛には、うなじやこめかみに少量を塗布する方法もあります。