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ナースの知恵袋 – 9

「変化」をつくって生きる活力を生み出す

気持ちのよい新緑の季節を迎えました。私たちの住む日本列島は海に囲まれ温帯に属し、桜前線を見ても南より始まった桜の開花は、北にたどり着くまでに2ヶ月半はかかります。常に四季それぞれの花鳥風月の変化を感じることができる恵まれた環境をそなえています。こういった風土の中で私たちは誰もが時間軸に従って、季節の「変化」を感じ取って営みを行っています。眼に映る自然は昼と夜や春と秋では色彩に様々な変化があるように、日ごと、季節ごとの温度や湿度の変化に合わせて生きているのが私たちなのです。そういった「変化に対する反応」こそが、人間の基本的な生き方であると考えます。

東京衛生学園専門学校看護学科


ナイチンゲールは、「看護覚書」の第五章に「変化(Variety)」と題して、「変化」が病人の生命に活力を与え、また生きる喜びや楽しみを与え、回復過程を助ける大きな要因になると述べています。
ナイチンゲールが説く「変化」のポイントは、以下の4点です。
①基本は、ゆっくりとした小さな「変化」を与えること。
②.療養者の思考に「変化」をもたせるように援助すること。
③回復を促進する効果的な変化は、療養者の「好み」にヒントがあること。
④「変化」は、まわりの人間の配慮によって意識してつくられること。
さらにナイチンゲールは、《回復させる現実の方法》として、2つの視点をあげています。

1 療養者の目に映る物の形や色彩に変化をもたせる

周知のことですが、人は紅い花を見ると刺激を感じ、深い青色を見ると疲労を感じ、角のあるものより丸みがあるものに安らぎを感じるものです。
暖色系の色には、温度を暖かく感じさせ、食欲を増進し、気分を明るくする効果があります。寒色系の色には、温度を低く感じさせ、精神を安定・集中させるなどの効果があります。しかし、心を癒すのは優しい色だけではありません。療養者に他の色彩を使って適度なメリハリを与えることは心に「変化」を与え活力をもたらします。療養者の好みの色と上手く組み合わせて活用することは心身をギアチェンジするシフトレバーの役割を果たすことになります。

2 療養者に必要なものは、自然が与えてくれる感銘である

健康な人が外へ出かけるとき、TPOに合わせた衣服を選択し、身なりや髪を整え、お化粧をし、おしゃれを楽しむように、療養者の方にも同じような気持ちの変化をもっていただけるようにしましょう。「健康な人々と同じように、外に出て花見をしたい、街に出てショッピングをしたいとか、散歩して動きたい」という動機付けをうながすことにもなります。おしゃれをして外に出かけ、自然の中にある植物や動物などと出会いその生命力を実感し何らかのエネルギーをもらうことも、生きる力を増幅する手段といえるのではないでしょうか。