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体内の毒素の解毒と排泄を促し、幅広い効用を発揮する

ドクダミ

利尿、緩下、発汗、消炎、抗アレルギーなど作用は多岐にわたり、
痔疾、高血圧、糖尿病などにも幅広く用いられます。

林真一郎(薬剤師 グリーンフラスコ(株)代表)


ドクダミは、日本・台湾・中国・ヒマラヤにかけて広く分布し、わが国では本州・四国・九州の低地に自生する草本で、6月から7月にかけておなじみの白い花 を咲かせます。この花は「ドクダミや 真昼の闇に 白十字」と詠まれたように、よく目立つ白色の十字形をしていますが、これはひとつの花ではなく、植物学的には多くの花の集合体です。

ドクダミの名前は、毒や痛みによく効くということからつけられた江戸の方言だったものが全国に広まったとされています。葉部に有効成分であるクエルシトリンやイソクエルシトリンといったフラボノイド類を重量の1~5パーセント程度含み、またドクダミの特異な匂いの原因である精油成分のデカノイルアセトアルデヒドやラウリンアルデヒドを0.005パーセント含みます。フラボノイド類は、植物が光合成の過程で生合成するフィトケミカル(植物化学)成分のひとつで、2000種類以上が知られていますが、その働きとしては、利尿作用や緩下作用(おだやかな下剤)、発汗作用、消炎作用、抗アレルギー作用など多岐にわたります。ドクダミは日本薬局方にも収載され、適用として、「便通薬として、あるいは慢性皮膚疾患に利尿、消炎の目的で煎用する」と記されています。また精油成分でアルデヒドに属するものは抗菌力を有しており、ドクダミの精油もブドウ球菌や糸状菌に対して抗菌作用を発揮することが確認されています。
さて、西洋・近代医学では、病気の原因を病原菌に求め、したがって治療の方法として薬(抗生物質)によって病原菌を攻撃することになります。コレラの原因はコレラ菌、赤痢の原因は赤痢菌というわけで、こうした考え方を特定病因論と呼びます。抗生物質は病原菌だけを攻撃することはできないため、体内の有用菌(病原菌ではなく生体に有益な菌、たとえばビフィズス菌やアシドフィルス菌など)にもダメージを与えてしまいます。

一方で伝統医学や自然療法は菌の存在そのものよりも菌を増殖させてしまった背景、つまり体内の環境の悪化を問題にします。こうした考え方は体液病理説と呼ばれ、身体に溜まった毒素を解毒し、一刻も早く尿や汗、便などの形で身体の外に排泄する方策がとられます。そしてそのためには、利尿、緩下、発汗を 促すフラボノイド類を豊富に含む植物は最適の素材であり、自然薬(ナチュラルメディスン)として用いることができるのです。
植物の精油も、ドクダミのアルデヒド類のように抗菌力を発揮しますが、抗生物質のように生体にダメージを与えることはありません。またフラボノイド類の作用は多様であるため、 適用症は感染症に限りません。ドクダミも、痔疾、高血圧、糖尿病など幅広く用いられ、ドクダミの別名である十薬が適用の広さを物語っているのです。

1.ドクダミのハーブティー

花が咲いている時期に収穫し、完全に乾燥させて保存します。便秘や便秘に伴う吹き出もの、尿量の減少、むくみなどに乾燥葉15gを水600mlで水の量が半分になるまで煎じ、3回に分けて食前または食間に服用します。ハトムギと10gずつブレンドして同様の方法で服用してもよいでしょう。

2.ドクダミの化粧水

花が咲いている時期に収穫し、まず葉と花を乾燥させます。次にジャムの空きビンなどにドクダミを1/3ほど入れ、日本酒か焼酎をビンの口まで注ぎ、フタをして密閉します。2週間から1か月ほどそのまま放置しますが、1日1回はビンを手で振ってかきまぜるようにします。できあがったらガーゼでこして、ガラスビンに保存します。そのままか適量の水で希釈して洗顔後や入浴後に使用します。

3.ドクダミの外用での使用法

おできや腫れもの、切り傷、虫さされなどには生の葉をもんで患部につけたり、乾燥葉を煎じたもので洗浄する方法があります。また化膿性の腫れものには、生の葉2~3枚をアルミホイルで包んでとろ火であぶり、どろどろにやわらかくなったものを患部に張りつける方法も知られています。生の葉を用いるのは乾燥葉よりも抗菌力が強いためです。