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ナースの知恵袋 – 11

高齢者のリハビリ支援における看護者の視座

高橋治 (東京衛生学園専門学校看護学科通信制)

人間にとって移動をすることは、ADL(日常生活動作)の基本といえます。とくに高齢者は、運動機能や視力・聴力・神経機能の低下により、活動量が減少しがちとなります。活動量が低下すると、精神面でも抑うつ状態になりやすく、生活空間が狭まり、ADLの自立が損なわれやすい状況に陥ります。適度な運動としてのリハビリや日常活動の継続は、老化の速度を緩やかにするとともに、気分転換やストレスの解消にもなり、対人交流を活発にして生きがいを持つことにもつながります。このように、高齢者が運動を継続する意義はとても大きいのです。
では、移動動作の確保のため個々のレベルに合った適度な運動(リハビリ)の援助を進めるに当たって、どんなことに留意すべきでしょうか。
まず、高齢者個々の身体の観察を常に行うことが大切です。なかでも、動作中の表情・脈拍の変化には気をつけてください。脈拍数が運動前の30%増、あるいは120回/分を超えた場合は一時運動を中止し、脈拍が落ち着くまで待ちましょう。
転倒や骨折などの事故が起こらないように十分配慮することも大切な援助の視点といえます。
次に、高齢者がADLを含むすべての運動に対し自発的・継続的に行える動機づけをすることも重要です。そのために、運動には次のような要素を取り入れるようにし、移動・動作の援助を行います。

①遊びの要素を取り入れ、楽しく運動できるようにする。
②自分の力でできる運動内容にし、運動をすることに対して喜びが得られるようにする。
③仲間と行えるようにする。
④目的となる行動に結びつける。
⑤家族・看護者・介護者の励ましが得られるようにし、できたことに対して評価され、ほめられるようにして、
  自信がもてるようにする。

また、高齢者に外出する機会(散歩やデイサービスへの参加など)を与えることはとても大切です。外出を阻害する要因を取り除き、できるかぎり高齢者 を外に連れ出してあげるようにしてください。このような環境をつくり確保することで、閉じこもりがちな高齢者の日常生活に、運動を習慣として位置づけるこ とができます。
以上の点を踏まえつつ、高齢者の身体機能が永く維持できるように関わり、社会性を確保し、その人がその人らしく生活できるように温かく見守って生活を支えていくことが、看護者の大切な役割といえるでしょう。