古代の色
東の空が白々とすると、遙か縄文の蓮の花たちは朝の気配を感じてか、ゆっくり、ゆっくりと開き始めた。山の背からようやく蓮田に朝日が射し込むと、光は花びらのなかに包み込まれて、淡い紅色の玉になった。さらに光線が強く射すようになると、黒々と見えていた葉の色は萌葱色に染まり始め、秘められた葉脈までも浮き上がってきた。葉に溜まった朝露がころころと動くたびに光の輪舞が起こり、すべての色が渾然としてそこに縄文の風景が甦った。
この蓮の花のルーツは2000年前に遡る。蓮の研究で有名な故大賀一郎博士が、1951年に検見川の草炭層から出土した古代の丸木舟とともに、たった3粒の蓮の実を見つけた。その中の1粒だけが発芽し現在に受け継がれている。