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東日本大震災における災害支援ナースの活動を報告

東日本大震災における災害支援ナースの活動を報告。

– 23年度災害看護担当者会議より –

8 月5 日(金)、日本看護協会のJNA ホールで、「平成23 年度都道府県看護協会災害看護担当者会議」が開催されました。日本看護協会は震災発生すぐに『災害支援ナース』を各地域に派遣した。その活動を振り返って,岩手、宮城、福島県看護協会からの報告。

協会には強いネットワークが

『災害支援ナース』とは災害時に看護職がボランティアで医療支援に加わり専門の知識や技術を提供するシステムです。日本看護協会は国内で災害が発生した場 合、都道府県看護協会及び関係機関等と連携して、被災県看護協会及び被災会員を支援し、このことを通して被災地の住民を支援しています。
会議は、この都道府県看護協会単位で災害看護担当者が集まり、災害看護や災害支援に関する情報提供や意見交換などを行っています。今回は、東日本大震災における災害支援ナースの活動ぶりとそこから得られた教訓がテーマとなりました。
開会の挨拶に立った日本看護協会の坂本すが会長は、「この東日本大震災の現場の体験から得た情報を語り合い、分析していただきたい」と会議の意義を強調し ましたそしてさらに「被災地に住んでいた看護師は配偶者とともに生活をしていた場をも失っていることを考え協会では、被災地の看護職が地域の医療の担い手 として根付いてもらうために独自の強いネットワークを構築し、いつまでもニーズに応じて支援するシステムを形づくっていきたい」と、力強く語っています。

もっと看護支援体制を知ってー岩手県看護協会

被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県それぞれの看護協会から代表者の報告がありました。
岩手県看護協会の金田昭子会長は、「地震発生後停電や電話の不通により情報の収集はラジオに頼るしか無かった」と、被災時に情報把握が困難だった経験を語 りました。同県の医療機関の特徴は県立の20ヵ所の病院と5か所の診療所が中心的な役割を担っていることですが、被災地の7ヵ所の病院のうち4ヵ所が機能 しなくなる被害を受けています。
同看護協会は県との防災協定を結んでいませんでした。

そこで当初は協会から県に災害支援ナース派遣を要請するかどうかを問い合わせた時、県側では「看護師のボランティアとして受け入れる体制がないので不要」 との回答でした。これに対して協会では、「被災地の県立病院には被災看護職がいるので業務負担を軽減する対策をすべき」と説得し、ようやく災害支援ナース の派遣に結びついた分けです。
3月18日から7月4日までに、災害支援ナースを2ヵ所の病院と2ヵ所の避難所に派遣しました。派遣者総数は64名で、うち県内からは43名でした。
今後は行政に災害支援体制についてもっと知ってもらうよう努力することや、どこにいつどの人材を派遣するかをコーディネイトする専門家が必要との見解が示 されました。「何かあった時、うかがいを立てなくてもスムーズ活動できるようにして欲しい」というのが金田会長の訴えです。

※大船渡

行政や日本看護協会と密な連携をー宮城県看護協会

宮城県看護協会の佃祥子常任理事は、「震災発生の直後に災害対策本部を設置した」と同協会の対応が早かったことを強調しました。ただちに協会にある救護室 を住民に提供、またトイレや飲み物を24時間提供するなどの対応をしたそうです。同協会では、会員の死亡行方不明は7月24日現在10名となっています。

同県では災害支援ナースについて比較的認知されており、要請件数も多かったようです。3月22日に日本看護協会災害対策現地事務局が設置されて以来、計9ヵ所の病院と83ヵ所の避難所計92ヵ所に計1306名の災害支援ナース、うち県内365名が派遣されました。
県内支援ナース派遣における課題としては、協会の職員が少なく派遣を調整するコーディネーターを育成していくことや災害ナースの育成などが挙げられました。同協会への登録支援ナースは、大震災前119名だったのに、震災発生後459名となっています。
また被災県の看護協会の役割としては、行政や日本看護協会とのより密な連携が課題として挙げられました。支援ナースを派遣する前に、先遣隊を派遣して情報収集することや、会員、他機関、あるいは全国に向けて情報発信することが大切であるとの認識が示されました。
被災看護協会としての課題として、
①必要物品の備蓄(震災発生の翌日から食料や消毒薬がなかった!)、
②マンパワーの充実(職員数が圧倒的に不足)、
③④としてネットワークの構築と通信手段(災害専用衛星電話がなく兵庫県看護協会から借り入れてしのいだ)
⑤迅速な対応(→組織のあり方の再検討)
などが挙げられた。

※気仙沼の医療支援

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原発事故にからむ人口流出が足カセに―福島県看護協会

福島県看護協会の鈴木ミドリ専務理事は、同県では原発事故が、災害支援ナースの活動の大きな障害になったことを報告した。震災発生の翌日の3月12日に日 本看護協会から災害支援ナース体制整備の連絡があり、18日に4施設の派遣要請をしたものの、原発事故の発生でナースの安全性の確保が難しいことから 「ナースの派遣は困難」との正式回答がありました。そのため、23日に県内の病院の看護管理者に災害支援ナースの派遣を要請、37ヵ所の病院から 1,073の支援ナースが3つの施設に派遣されました。29日には、日本看護協会看護研修学校教員2名が被災病院の支援に派遣されています。
しかし、同県内の医療機関・避難所からの支援ナース派遣要請には、対応できなかったのが現実です。と言うのも医療機関が被災してしまい搬入患者受け入れの ため混乱きたし、県内支援ナースの調整が困難な状況でした。原発事故の問題で、看護師の活動場所の制限もありました。また、震災直後は通信網が不通にな り、ガソリンも不足したため移動手段の確保が難しいという理由もありました。
福島県では、原発事故にからむ人口流出がとりわけ大きな問題になっています。その数は7月初めで約3万6000人となっていました。なかでも看護職の流 出、とりわけ若い世代の流出は深刻な問題となっています。鈴木専務理事は、「このままでは様々な産業が立ち行かなくなる。今後福島がどうなるかとても心 配」と危機感を示しました。
今後、協会としては被災看護職の支援を進め、復興状況と関連して職場の確保を進めたり、避難所等の巡回相談の実施などを挙げています。放射線や職場の縮小 等により、退職・休業の看護職が増えているところで、来年度以降の新人看護職の確保が難しくなるという見通しが示されました。今後も全国の看護協会からの 支援が求められるとのことです。

☆東日本大震災における災害支援ナースの活動実態
http://www.nurse.or.jp/home/saigai/pdf/shienkatudo.pdf

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