クラリセージ
マスカットに似た香りが、こころのモヤモヤを晴らし、
更年期の不安定や中年クライシスを上手に乗りきるお手伝いをします。
歴史的にみて世界で最も古い飲料を三つあげると、のどの渇きを癒すための水、嗜好品としてのエール(自家製ビール)、それに病を癒すハーブティーが知られています。
ハー ブティーの中で最も古くから用いられてきたものにセージ(学名Salvia officinalis)があります。学名のSalviaはラテン語のSalvereに由来し、健康・治療・救いを意味します。このことを裏づけるよう に、中国やペルシャ、欧州など広い地域で「長生きしたければ庭にセージを植えなさい」という諺があります。またヒポクラテス医学の流れをくむギリシアのサ レルノ医学校には、「セージは救助者、自然は仲介者」としてこのハーブを用いた数多くの処方が残されています。セージの老化防止効果については科学的アプ ローチからも協力な抗酸化物質の存在が確認されており、昔の人々の洞察力には驚かされるばかりです。
今回とりあげるクラリセージ(学名Salvia sclarea)はセージの近縁種ですが、セージよりも生体への作用がマイルドであるためアロマテラピーでは最もよく用いられる精油の一つです。クラリセージはマスカットやナッツに似た芳香を放ち、アロマテラピーでは生理痛や生理前症候群のファーストチョイス(第一選択薬)として用いられます。これはこの精油に鎮静・鎮痛作用を示すと共にホルモン分泌を調節する成分が含まれていることによるものです。
またクラリセージの語源が、「明るい、澄んだ」を表すラテン語の「クラルス」に由来することからもわかるように、気分の落ち込みや不安感などといったモヤモヤを「霧が晴れるように」解消してくれることも知られています。したがって更年期の不安定な心理状態や中年クライシスといったアイデンティティーの危機にもこの香りで上手に乗りきることが可能です。
さて、中世のドイツではこのマスカットに似た香りに目をつけた悪徳商人が、安物のワインにこの香りをつけることによって芳しい高級ワインに見せかけること が流行しました。このような悪事が長続きするはずもなく、クラリセージを混ぜたワインやビールを飲むとひどい酔い方をしたり、悪夢にうなされるといったことが多発しました。
クラリセージの香りは「幸福感が得られる香り」として知られていますが、使い方を誤るとこのようなバッドトリップにも似た体験を味わうことになります。香りの脳内への作用機序については、さらなる研究を待たなければなりませんが、エンドルフィンなどの脳内の生理活性物質の分泌に関わっていることはどうやら事実のようです。
いずれにしても局部と全身、こころと体といったトータルな作用を起こすことがアロマテラピーの特徴であり、また使い方については医薬品以上の繊細さが必要であることもまた事実のようです。
1.蒸気吸入
エッセンシャルオイルの香りを嗅いで脳に信号を送る方法です。
▼使用法:ティーカップかボウルに熱湯を入れ、そこにエッセンシャルオイルを3、4滴たらします。蒸気と一緒に有効成分がお部屋いっぱいに広がります。
★例:寝室にクラリセージの香りを漂わせると入眠がスムーズになり、質の高い睡眠が得られます。
2.入浴(アロマバス)
エッセンシャルオイルを入浴時に用いる方法で、香りを吸い込むとともに皮膚からも吸収されます。
▼使用法:入浴時にバスタブに3、4滴たらして手でよくかきまぜてから入浴します。
★例:ややぬるめのお湯でクラリセージバスを行うと深いリラックスが得られます。
3.オイルマッサージ
エッセンシャルオイルを植物油に希釈して、それをマッサージすることにより皮膚から体内に浸透させます。
▼使用法:ホホバ油10mlにエッセンシャルオイル2、4滴の割合で希釈してマッサージオイルを作り、お風呂あがりにマッサージしてすり込みます。
★例:首・背中・筋肉の緊張や生理痛の時などにクラリセージのオイルマッサージを行うと筋肉や子宮筋を調整し回復が速まります。